成年後見制度と家族信託はどちらも、成人が自己決定能力を持たない場合に役立つ制度ですが、それぞれ異なる特徴と目的があります。
項目 | 成年後見制度 | 家族信託 |
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目的 | 成年が自己決定能力を持たない場合の生活全般の管理 | 家族の財産管理と適切な使用 |
担当者 | 後見人 | 信託者 |
範囲 | 生活全般(日常生活、財産管理、医療など) | 主に財産管理に限定 |
適用条件 | 法的に定められた要件を満たす必要がある | 家族間での合意が必要 |
どうですかこれで分かりますか?
もう少しかみ砕いてみると、成年後見制度は自己決定能力を持たない本人を守るための制度です。
誰かに勧められるままに契約してしまったり、安く土地や貴金属を売ってしまったりすることを防ぐためのもので、成年被後見人として認められると、契約を取り消すことができるのです。
当然、24時間付きっ切りということはそうそうないので、そういった点では安心です。
ただ問題は誰が後見人になるかが分からないことです。申述書には申立人のほか親族のリストも記入しますが、だれを選ぶかは家庭裁判所の判断です。一般的には親族ではなく弁護士などの他人が選ばれることが多いそうです。その理由は、家族だからこそ、本人の意向や利益とは関係なく自らの利益に基づいた行為をして問題になることが多かったためとのことです。相続の難しさを知るものとしては納得できる話ですが、家族からすればたまったものではありません。赤の他人が本人の利益になるかどうかの点ですべてを判断するのですから。家族の状況など考慮してもらえません。
そこで家族信託です。こちらは本人の責任能力も残ったままのため、先ほどのように本人の契約を無効にすることはできませんが、本人の代わりに家族が財産の処理をすることができます。家族間でもめ事や仲たがいのない場合はより融通が利くと言えます。ただし、本人に事理弁識能力が全く欠けてしまった状態ではこちらは行うことができませんので成年後見制度を選択するしかなくなります。
家族信託を行う場合は、家族信託の契約書を作成し公証役場で契約を締結する必要があります。
というように、実際にどちらを選ぶかは難しい問題です。どちらがあなたの状況に適しているか、具体的なニーズや環境に応じて選ぶことが必要なので、専門知識のある行政書士等の専門家に相談ください。