前回のブログでは、相続の相談先を選ぶ基準についてお伝えしました。誰に相談するにしても、必ず最初に求められるのが「何が、どこに、どれだけあるか」という情報です。
製造現場において、在庫の棚卸しをせずに生産計画が立てられないのと同じように、相続も「現状把握(アセスメント)」ができなければ、適切な法的・税務的アドバイスは不可能です。今回は、スムーズな相続を実現するための「情報の整頓術」を解説します。
【結論】「物理資産」と「デジタル資産」の両面でリスト化を
相続手続きのリードタイム(期間)を短縮し、コストをミニマム化するためには、以下の2つのカテゴリーで情報を整理し、「家族がアクセス可能な状態」に構造化しておくことが結論となります。
1. 整理すべき2つの資産カテゴリー
- 物理資産: 不動産(権利証)、預貯金(通帳)、有価証券、貴金属、骨董品など。
- デジタル資産: ネット銀行、証券口座、仮想通貨、サブスクリプション、SNSアカウントなど。
3軸からの多角的な考察
① コンプライアンス視点(法務・行政書士)
漏れのない資産リストは、遺産分割協議の「正当性」を担保します。
- 根拠: 協議が終わった後に「新たな隠し財産」が見つかると、協議がやり直し(手戻り)になり、親族間の不信感や法的トラブルに発展します。
- 具体例: 私たち行政書士は、名寄帳(なよせちょう)の取得や金融機関への照会を通じて、漏れのない「財産目録」を作成し、法的に強固な合意形成をサポートします。
② 生活設計視点(FP)
資産の可視化は、納税資金の確保と遺族の生活守るためのリスク管理です。
- 根拠: 預貯金がどこにあるか分からないと、葬儀費用や当面の生活費、相続税の納税資金が引き出せず、遺族が資金ショートを起こすリスクがあります。
- 具体例: FPとして、生命保険の受取人設定や死亡退職金の活用など、相続発生直後に必要となる「現金(流動性)」の確保をアドバイスします。
③ 効率化・DX視点(エンジニア・IT)
「紙の通帳」に頼らない、現代的な管理への移行を推奨します。
- 根拠: エンジニアの世界では「ドキュメントの共有化」は常識ですが、家庭の資産情報はブラックボックス化しがちです。
- 具体例: 資産管理アプリの活用や、パスワード管理ツールの「緊急アクセス機能」の設定を提案します。また、重要な書類はスキャンしてクラウド(Google Drive等)に格納し、権限設定を適切に行うことで、物理的な紛失リスクをゼロにします。
まとめ:可視化は「残された人への最後のギフト」
相続を「争族」にさせない最大の秘訣は、情報の不透明さを排除することです。
生産工程を最適化するように、まずはご自身の資産状況を「標準化・見える化」することから始めましょう。
次回のブログでは、多くの方が頭を悩ませる「不動産の評価と分割」について、工学的な視点も交えて解説します。

