【第2回】不動産・動産編:現物と帳簿を一致させる「現場主義」の調査術
「実家の土地以外に、山林や私道があるなんて知らなかった」
「亡くなった父が骨董品にいくら使っていたのか、価値がさっぱりわからない」
不動産や動産(車、貴金属、家財など)の調査は、デジタル資産とは異なり、「現場」に答えが落ちていることが多いのが特徴です。エンジニアの世界では「三現主義(現場・現物・現実)」が基本ですが、相続財産調査もまさにこの精神が不可欠です。
第2回では、登記簿という「データ」と、現物という「事実」を論理的に結びつける調査のコツを解説します。
1. 「名寄帳」で見落としゼロの土地調査
「権利証があるから大丈夫」という思い込みは、エンジニアリングにおける「設計図の過信」と同じリスクを孕んでいます。
- 根拠: 権利証(登記識別情報)は、すべての土地を網羅しているとは限りません。市町村が発行する「名寄帳(なよせちょう)」を取得することで、その自治体内で亡くなった方が所有するすべての不動産を一覧で把握できます。
- 具体例: 共有持分となっている私道や、価値が低く固定資産税がかかっていないため「評価明細」に載らない原野など、見落としやすい「隠れ資産」を炙り出します。
- 結論: 行政書士として、名寄帳という「全数検査」のデータを取得し、登記簿謄本と照らし合わせることで、将来の「遺産分割のやり直し」という重大な手戻りを防ぎます。
2. FP視点で捉える「動産の処分コストと換価価値」
貴金属や車、あるいは趣味のコレクションなどは、単なる「思い出」ではなく、負のコスト(処分費用)になる可能性があります。
- 根拠: 動産の価値を判定するには、専門の鑑定士による評価が必要です。特に古い家屋の場合、残置物の撤去費用が資産価値を上回る「マイナスの資産」になるケースも少なくありません。
- 具体例: FPの視点から、売却して納税資金に充てられる「換価資産」と、維持管理費や固定資産税だけがかさむ「遊休資産」を選別します。
- 結論: 早期に「資産の棚卸し」を行い、売却・寄付・廃棄のコストシミュレーションを立てることで、家族が負う経済的負担を最適化します。
3. 三現主義」による現場ログのデジタル化
広い敷地や大量の遺品を一点一点管理するのは非効率です。ここでエンジニアの「資産管理」の手法を応用します。
- 根拠: 現場の状況を写真や動画で記録し、クラウド上で図面や地図データ(Google Earth等)と紐付けることで、関係者全員が「現場に行かなくても状況を把握できる」状態を作ります。
- 具体例:土地の境界標や家財の写真を「位置情報(GPS)付き」で保存。これを資産リストとリンクさせることで、正確な「デジタル財産目録」を構築します。
- 結論: 現場の「アナログな事実」をデジタルデータへ変換(デジタイゼーション)することで、専門家への相談や親族間の話し合いのスピードを飛躍的に向上させます。
第2回のまとめ
不動産・動産の調査は、役所の書類(データ)と、現地の状況(事実)のズレを埋めていく作業です。一つひとつ丁寧に「裏付け」を取ることが、トラブルのない相続への近道となります。
次回は最終回、「【第3回】まとめ編:『財産目録』という名の設計図を完成させる」をお届けします。

