皆さま、こんにちは。
前回の記事では、認知症による「資産凍結」がいかに企業の事業継続や家族の生活を脅かすかというリスクについてお話ししました。
私はエンジニア時代、不測の事態でもラインを止めないための「冗長化」や「バックアップ系」の設計に携わってきました。相続対策も全く同じです。本人の判断能力が低下した際に、誰が、どの権限を、どう動かすのか。この「権利のシステム設計」が、家族の未来を左右します。
【結論】自由度の高い運用を望むなら「家族信託」による設計を
結論から申し上げます。
将来にわたって資産を柔軟に運用・活用したいのであれば、早期に「家族信託」というアーキテクチャを導入することを強く推奨します。
国が用意した既存システムである「成年後見制度」は、本人の財産保護には強力ですが、経営や積極的な資産活用という点では、非常に制約の多い「レガシーシステム」と言わざるを得ないからです。
【比較】2つのシステムの構造的違い
それぞれのシステム特性を、エンジニア的な視点も交えて比較表にまとめました。
| 項目 | 成年後見制度(家庭裁判所) | 家族信託(契約による管理) |
| 設計思想(目的) | 財産保護(現状維持):減らさないことが最優先。 | 柔軟な管理(目的達成):本人の希望に沿った運用。 |
| コスト | 月額報酬が永続的に発生(外部専門家の場合)。 | 初期構築費用のみで、運用コストは低い。 |
| 自由度(拡張性) | 極めて低い。節税対策や投資は原則不可。 | 極めて高い。契約の範囲内で自由な設計が可能。 |
| システム例え | ガチガチに固められた「レガシーシステム」 | 柔軟に構成できる「クラウドアーキテクチャ」 |
【具体例】「孫への教育資金」というパッチを当てられるか?
具体的なケースを想定してみましょう。
「自分が認知症になっても、孫の教育資金だけは毎年100万円ずつ出し続けたい」という要望があったとします。
- 成年後見制度の場合:裁判所や後見人は「本人の財産を減らさないこと」を重視します。教育資金の贈与は「本人にとってのメリット」とは見なされにくく、原則としてストップしてしまいます。
- 家族信託の場合:あらかじめ「孫の教育資金として給付する」という条項を信託契約(設計図)に書き込んでおけば、本人の判断能力が低下した後も、信頼できる受託者(子など)の手によって、その想いを継続させることが可能です。
多角的な視点からのアドバイス
- 労務・社労士の視点:経営者が認知症になり、家族がその財産管理や介護に翻弄されると、従業員の雇用維持にも悪影響を及ぼします。家族信託で管理権限を明確にしておくことは、究極の「福利厚生(経営安定化)」です。
- FPの視点:成年後見人は一度選任されると、原則として本人が亡くなるまで解任できず、月額数万円の報酬が発生し続けます。30年続けば1,000万円以上のコストになることも。早期の信託組成は、トータルコストの最適化に繋がります。
- エンジニアの視点(効率化・DX):成年後見は裁判所という「外部サーバー」へのアクセス権限が必要なシステムです。一方、家族信託は家族内で完結する「エッジコンピューティング」のようなもの。反応速度(意思決定スピード)が圧倒的に速いのが特徴です。
【AI活用提案】業務効率化のアドバイス
家族信託や後見制度の検討において、最も時間がかかるのは「親族間の合意形成」と「複雑な制度の理解」です。ここでAIを強力なディレクターとして活用しましょう。
AIによる「制度比較・説明資料」の自動生成
AIに対し、「わが家の資産構成(不動産1、預金2)と、家族構成(長男、長女)を入力するので、家族信託と成年後見制度を利用した場合のメリット・デメリットを、『親を説得するための誠実な手紙』の形式で出力して」と指示してください。
AIが生成したドラフトをベースに、士業である私が法的精査を加えることで、論理的かつ情熱的な、家族を動かす提案資料を短時間で作成できます。
次回、最終回となる第3回では、これらの設計を形にするための「最終設計図」——遺言書とデジタル資産、そして攻めの承継についてお伝えします。
「仕組みを作れば、想いは止まらない。」
最適なシステム構成を、一緒に考えていきましょう。

