【第4回】被災後の在留資格と雇用継続のルール
大規模な災害が起きた際、外国人従業員の頭をよぎるのは「仕事はどうなるのか?」「日本にいられなくなるのではないか?」という切実な不安です。
在留カードの紛失や、工場の操業停止といった事態に直面したとき、経営者はどのような法的アドバイスを行うべきでしょうか。
第4回は、行政書士としての専門領域である在留資格(ビザ)と雇用契約の特例について解説します。
【結論】
災害時の法務対応は、「特別措置の迅速な把握」と「安全配慮義務に基づく雇用維持の判断」がすべてです。
【根拠】
1. 在留カード紛失時の対応(入管法)
災害で在留カードを紛失・焼失した場合、原則として「14日以内」に再交付申請を行う必要があります。
- ポイント: ただし、大規模災害時には期間が延長される「特例」が出ることがあります。経営者は従業員に対し、「カードがなくてもすぐに強制送還されることはない」と伝え、安心させた上で、最寄りの入管局の受付状況を確認してください。
2. 休業手当と「不可抗力」の判断(労働基準法)
地震等で工場が止まった場合、休業手当(平均賃金の60%以上)の支払い義務があるかが焦点となります。
- ポイント: 労働基準法上の「不可抗力」とみなされるには、①外部から発生した事故であること、②経営者が最大限の回避努力をしたこと、の2点が必要です。エンジニア的視点で言えば、設備のバックアップ体制や復旧計画の有無が、この「回避努力」の判断材料になり得ます。
3. 就労場所の変更と特例措置
勤務先が被災し、一時的に他県の関連工場で働いてもらう場合など、本来は「在留資格の変更」や「所属機関の届出」が必要です。
- ポイント: 激甚災害時には、届出期限の猶予や、資格外活動許可の弾力的運用(臨時のアルバイト許可など)が行われることがあります。行政書士などの専門家を通じ、法務省の最新通達をリアルタイムでキャッチアップすることが重要です。
【3軸からの考察】
- コンプライアンス視点(行政書士):被災を理由に不当な解雇を行えば、後の労働紛争リスクに加え、将来の外国人雇用(呼び寄せ)の審査に悪影響を及ぼします。特例措置を逆手に取った「不法就労」に巻き込まれないよう、正しい法的知識でのガードが必要です。
- コスト・労務視点(社労士・FP):休業期間中の雇用維持には、雇用調整助成金の活用が鍵となります。また、生活資金に困った従業員には、社会福祉協議会の「緊急小口資金」などの貸付制度を案内することも、FP的視点での生活設計サポートとして有効です。
- 効率化・DX視点(エンジニア):「重要書類のデジタル化(クラウド管理)」が、有事の法務手続を劇的に効率化します。在留カードのコピーや雇用契約書を暗号化されたクラウドに保管しておけば、原本が消失しても速やかに再発行手続に入れます。
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次回予告:
いよいよ最終回、第5回は「実践編」です。35年のエンジニア経験を活かした、現場で本当に機能する「外国人対応BCP」の構築術についてお話しします。

