連載第2回のテーマは、令和8年3月9日から適用される「技術・人文知識・国際業務(以下、技人国)」における派遣就労の新基準についてです。
今回の改正により、これまでの派遣実務の「常識」が通用しなくなる恐れがあります。エンジニア的な視点で言えば、仕様(運用ルール)がより厳格な「逐次確認型」に移行したと言えるでしょう。
1. 結論:申請時点での「派遣先確定」が絶対条件に
今回の改正で最も注目すべき点は、「申請時点で派遣先が決まっていない場合、許可は下りない」という運用が明文化されたことです(別添1)。
これまでは、採用後に派遣先を探す「待機期間」を見越した申請が行われるケースもありましたが、今後は不許可のリスクが極めて高くなります。
2. 根拠:追加された2つの重要書類と実務変更
令和8年3月9日以降の申請分から、以下の書類と対応が必須となります。
① 「派遣労働に関する誓約書」の提出(カテゴリーを問わず必須)
- 派遣元(雇用主)だけでなく、派遣先の署名も必要となる新たな誓約書が導入されました。
- 派遣先での業務内容が在留資格の範囲内(高度な専門業務)であることを、派遣先企業も連帯して保証する形になります。
② カテゴリー3・4における「個別派遣契約書」の写し
- 契約期間、就業場所、具体的な職務内容が明記された「個別契約書」の提出が求められます。
- 「とりあえず更新」は認められず、契約期間に応じた在留期間(1年など)が決定される仕組みがより厳密になります。
3. 具体例:プロジェクトの端境期(はざかいき)に潜むリスク
例えば、現在のプロジェクトが3月末で終了し、4月から新しい派遣先に移る予定のエンジニアが、3月初旬に在留更新申請を行う場合を考えてみましょう。
- 旧運用: 「次の現場は営業中です」という疎明で進められることもあった。
- 新運用: 3月9日以降の申請では、4月からの派遣先と締結した「個別契約書」および「誓約書」が手元に揃っていなければ、申請の受理や許可が危うくなります。
【視点別アドバイス】
- コンプライアンス(法務)視点: 派遣先企業に対し、「今後は入管への誓約書署名が必要になります」という事前の周知が不可欠です。派遣先の協力が得られない場合、ビザが出ないという事態になりかねません。
- コスト・労務視点: 待機期間中の雇用維持コストを抑えるためにも、ビザの期限とプロジェクトの開始時期をこれまで以上に精密にリンクさせる「納期管理」が求められます。
- 効率化・DX視点: 派遣先から署名を得るプロセスをアナログ(郵送・押印)で行うと、申請期限に間に合わないリスクがあります。電子署名ツールや、契約情報のデータベース化による「誓約書作成の自動化」を急ぐべきです。
次回予告
次回は、「【第3回】企業内転勤の落とし穴:カテゴリー3・4で刷新される提出書類のポイント」を解説します。海外拠点との連携を強化している企業様は必見です。
生成AI活用のヒント
派遣先ごとに異なる「業務内容の記述」が、技人国の要件(専門性)を満たしているか不安な場合、生成AIに「派遣契約書の業務内容」を読み込ませ、「入管の審査基準に照らして専門性が不足している箇所はないか」をセルフチェックさせるプロンプトが有効です。
本件に関する誓約書の雛形確認や、実務上のご相談はお気軽にお問い合わせください。

