今回は、永住申請のハードルを大きく押し上げた2つの重要変更点について解説します。
1. 結論:公的義務の履行は「完納」から「期限内納付」へ
これまでの永住審査でも、税金や年金の未納がないことは必須条件でした。しかし、今回の改訂ではさらに一歩踏み込み、「当初の納期限内に履行されていること」が明文化されました(ガイドライン1(3)イおよび注2)。
つまり、「申請前にまとめて払った」というリカバリーが一切通用しなくなったのです。
2. 根拠:ガイドラインに追加された「2つの高い壁」
令和8年2月の改訂により、以下の要件が厳格に評価されることになりました(別添4)。
① 納税・年金・医療保険の「納期限遵守」
- 支払っていることは大前提として、たとえ1日であっても納期限を過ぎて支払った履歴があれば、原則として「消極的に評価(不許可の方向で検討)」されます。
- 転職時の国民年金・国民健康保険への切り替え時期に発生しがちな「払い忘れ」が、数年後の永住申請で致命傷になるリスクがあります。
② 「上陸許可基準」への適合性(1(3)エの新設)
- 現在持っている在留資格(例:技人国)の要件を、現在進行形で満たしていることが明記されました。
- 例えば「技術・人文知識・国際業務」の資格を持ちながら、実態として単純作業に従事している場合、それは「日本国の利益に合致しない」とみなされ、永住は許可されません。
3. 具体例:うっかり失念が招く「永住権の喪失」
ある優秀なエンジニアが、会社を辞めてから次の会社に入社するまでの2ヶ月間、国民年金の納付書が届いていることに気づかず、1ヶ月遅れてコンビニで支払ったとします。
- 旧運用: 申請時に「完納証明書」が出ていれば、事情説明により許可される可能性がありました。
- 新運用: 「納期遅延」の記録が残っているため、それだけで不許可のリスクが生じます。入管は「ルールを守る意識(コンプライアンス)」の欠如とみなすからです。
【視点別アドバイス】
- コンプライアンス(法務)視点: 「現に有している在留資格の活動」を適正に行っているか、定期的なジョブディスクリプションの確認が必要です。
- コスト・労務(社労士)視点: 従業員が私生活での公的義務を怠ることが、将来の離職(永住不許可による帰国)につながるリスクを認識すべきです。社内研修等で「納期遵守」の重要性を周知することをお勧めします。
- FP(生活設計)視点: 永住権は住宅ローンの審査等にも大きく影響します。1回の不注意が従業員の人生設計を狂わせないよう、自動振替の推奨などのアドバイスが有効です。
次回予告
次回は、第1部の締めくくりとして、「【第5回】永住許可の『最長期間』要件:実務上の判断基準と今後の展望」を解説します。

