【Q&A特集】

許可が下りる前の「入社式」や「研修」への参加は、不法就労になる?

外国人雇用を推進する中小企業の経営者・人事担当者の皆様、こんにちは。行政書士の山本です。

入管法という厳格なプロトコルにおいては、どこまでが「準備」で、どこからが「稼働(就労)」にあたるのか、その境界線を明確に定義しておく必要があります。

今回は、公式Q&A(Q17)に基づき、在留資格の変更許可が下りる前の入社式や研修への参加について、論理的に解説します。


1. 結論:報酬が発生しない「儀礼・学習」なら出席可能

就労資格への変更許可がまだ下りていない段階であっても、入社式への出席や、報酬の発生しない研修に参加すること自体は差し支えありません

ただし、これはあくまで「就労」に至らない範囲に限定されたルールです。


2. 根拠:就労の定義(指揮命令と対価の有無)

入管庁の回答(A17)に基づき、許可前の活動が認められる条件を構造化します

  • 認められる活動(非就労):
    • 入社式への出席(儀礼的な行事)
    • 報酬(給与・手当)が発生しない座学中心の研修
  • 認められない活動(不法就労):
    • 実際に出勤し、現場で業務に従事すること
    • 業務の対価として報酬(実費を超える手当等を含む)を受けること

つまり、「会社の指揮命令下で労働を提供し、その対価を得る」という就労のスイッチが入るのは、あくまで「在留資格変更許可」というフラグがオンになった後でなければなりません


3. 具体例:ホワイト・グレー・ブラックの判定基準

実務において、研修の内容が「就労」とみなされないためのチェックポイントを整理します。

  • ホワイト(安全):
    • 社長訓示の聴講、社内規定の説明、社内システムのID配布(ログイン不可状態)など。
  • グレー(注意):
    • 実際の機材を使った練習。たとえ「練習」であっても、それが実務に直結し、会社に利益をもたらす形であれば「就労」と判断されるリスクがあります。
  • ブラック(違反):
    • 先輩社員の横について、実際に顧客対応や製造ラインに入る行為。これは「見習い期間」であっても立派な就労です。

【多角的なアドバイス】

  • コンプライアンス(行政書士)視点: 許可前に「研修手当」などの名目で金銭を支払うことは避けましょう。入管の審査官は、後に提出される給与明細や課税証明書との整合性(エラーチェック)を必ず行います。不適切な支払いは、次回の更新時の「不許可フラグ」になりかねません。
  • コスト・労務(社労士)視点: 入社式や研修を「労働時間」としてカウントしない場合、その間の事故(怪我など)は原則として労災の対象外となる可能性があります。安全管理の観点からも、本格的な実技研修は許可取得後に行う「フェーズ分け」が賢明です。
  • 効率化・DX(エンジニア)視点: 許可が下りるまでの待機期間を「ナレッジ共有」のフェーズとして活用しましょう。クラウド上のマニュアル閲覧や、対面でのコミュニケーションを通じた文化の理解など、「物理的な労働を伴わないオンボーディング」を設計することで、許可後の「本番稼働」スピードを最大化できます。

関連キーワード

入社式、研修、不法就労、報酬の有無、在留資格変更許可、指揮命令、オンボーディング


次回予告

次回は、「Q18:自社に所属する申請人から在職証明書の発行を依頼されたのですが、どのような内容が盛り込まれている必要がありますか。」について詳しく解説します。

生成AI活用の提案

入社前の研修カリキュラムをAIに読み込ませ、「これは入管法上の『就労』に該当するリスクがあるか?」をスクリーニングさせましょう。また、許可待ちの外国人本人に対し、現在の法的なステータスと「やって良いこと・ダメなこと」を分かりやすく説明する多言語リマインダーをAIで自動生成し、配信することで、意図しない不法就労(ヒューマンエラー)を未然に防ぐことができます。

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