「許可が出たら契約」はNG?申請時に必要な契約の「確定度」
外国人雇用を推進する中小企業の皆様、こんにちは。行政書士の山本です。
エンジニアリングの世界において、工場のラインを新設する際、主要な設備の「発注スペック」が未確定のままでは、設置許可や建築確認を通すことはできません。入管手続きにおいても同様に、「許可が下りたら条件を決めよう」という後回しのスタンスでは、審査の土台となる「活動の信憑性」を証明することができません。
今回は、公式Q&A(Q21)に基づき、申請時点での雇用契約書の必要性について論理的に解説します。
1. 結論:申請時点で「契約締結済み」であることが必須
結論から申し上げますと、雇用契約書(または労働条件通知書)が作成されていない段階で申請を行うことはできません。
入管法上の審査は、「どのような条件で雇用されるのか」が確定していることを前提に行われます。したがって、申請時には、会社と本人の双方が署名・捺印した「雇用契約書等の写し」を提出する必要があります。
2. 根拠:審査の「入力データ」としての契約書
入管庁の回答に基づき、なぜ事前の契約締結が必要なのかを構造化します。
① 審査対象の特定
- 入管は「この条件(職務内容、報酬、期間)での活動が、法的な基準を満たしているか」を審査します。契約書がない状態は、エンジニアリングで言えば「入力値が未定義」の状態で計算を回そうとするようなもので、審査自体が成立しません。
② 虚偽・不正の防止
- 許可が出た後に条件を勝手に変更されるリスクを防ぐため、あらかじめ確定した合意内容をエビデンスとして提出させる必要があります。
③ 停止条件付契約の活用
- Q20で解説した通り、「在留資格が許可されたら発効する」という停止条件を付すことで、許可前の契約締結に伴うリスクを回避しながら、入管の要求する「確定した合意」を提示することが可能です。
3. 具体例:実務上の「デッドロック」を回避する手順
「もし不許可になったら、契約の義務だけが残るのでは?」という経営者様の懸念(デッドロック)を解消するための正しい手順は以下の通りです。
- 条件交渉・内定: 職務内容や給与を決定する。
- 条件付き契約の締結: 「在留資格が許可されなかった場合は失効する」旨の条項を入れた契約書を作成し、双方が署名する。
- 申請(デプロイ): その契約書をエビデンスとして入管へ提出する。
- 許可(アクティベート): 許可が下りた瞬間、契約が法的に有効となり、入社・就労へと進む。
このフローを踏むことで、法的リスクをゼロに抑えつつ、入管の審査仕様を完全に満たすことができます。
【多角的なアドバイス】
- コンプライアンス(行政書士)視点:「とりあえず適当な書類で申請して、後で本当の契約書を作る」という行為は、虚偽申請とみなされる極めて危険な「バグ」を含んだ対応です。一度入管に提出した書類は記録に残るため、後の更新時に矛盾が生じると、企業の信頼性を著しく損なうことになります。
- コスト・労務(社労士)視点:内定から入社までの期間が長くなる海外採用などでは、契約締結後の「心変わり」による内定辞退のリスクも考慮する必要があります。契約書締結と並行して、定期的なフォローアップ(オンボーディング)を行うことが、採用コストを無駄にしないための重要な「保守運用」となります。
- 効率化・DX(エンジニア)視点:電子署名(クラウドサイン等)を活用すれば、ドラフトの修正から最終合意、そしてPDF化して在留申請オンラインシステムへアップロードするまでの一連のプロセスを、物理的な紙を介さずに「シームレスなパイプライン」として構築できます。これにより、申請準備のリードタイムを劇的に短縮可能です。
関連キーワード
雇用契約書の提出時期、停止条件、活動の信憑性、内定通知書、エビデンス、在留申請オンラインシステム
次回予告
次回は、**「Q22:契約書以外の書類で雇用条件を証明することはできる?」**について解説します。
生成AI活用の提案
自社の標準的な就業規則と、今回の採用条件をAIに読み込ませ、入管の審査基準に合致した「停止条件付き雇用契約書」のドラフトを自動生成しましょう。法的な必須項目をAIでプレチェックすることで、書類の差し戻し(コンパイルエラー)を防ぎ、スムーズな申請を実現できます。

