前回のブログでは、資産の棚卸しによる「可視化」の重要性をお伝えしました。そのリストの中で、最も「扱いが重い」のが不動産です。
不動産は、現金のように1円単位でパッチリと分けることができません。
今回は、この不動産相続をロジカルに解決するための考え方を解説します。
【結論】「評価の算出」と「分割手法」のセット設計が不可欠
不動産相続をスムーズに進めるためには、「公的な評価(エビデンス)」を確定させた上で、4つの分割手法から最適な「システム(出口)」を選ぶことが結論となります。
不動産分割の4つの代表的アルゴリズム
- 現物分割: 土地を分筆(切り分け)して分ける。
- 換価分割: 売却して現金化し、その配分を決める。
- 代償分割: 1人が不動産を継ぎ、他の人に現金(代償金)を払う。
- 共有持分: 複数人で共同所有する。(※後々問題になるケースが多いため、原則非推奨です)
3軸からの多角的な考察
① コンプライアンス視点(法務・行政書士)
不動産相続のボトルネックは「権利関係の未整理」にあります。
- 根拠: 境界が未確定だったり、昭和の時代の名義が残っていたりすると、売却も担保設定もできません。
- 具体例: 前回の記事で触れた「名寄帳」をベースに、未登記建物の有無や道路境界の状況を確認します。法改正により相続登記が義務化された今、正確な権利移転はコンプライアンスの最低条件です。
② 生活設計視点(FP)
「評価額」のズレが、将来のキャッシュフローを圧迫します。
- 根拠: 相続税評価額(路線価)と実勢価格(時価)には乖離があります。時価1億円の土地を「評価額8,000万円だから」とそのまま分けると、受取額に実質的な不公平が生じ、将来的な紛争のもとになりかねません。
- 具体例: FPとして、将来の維持費(固定資産税や修繕費)を含めたライフプランニングを行い、その不動産を持つことが遺族にとって「プラスの資産」か「負の遺産」かをシミュレーションします。
③ 効率化・DX視点(エンジニア・IT)
不動産の価値を「データ」で多角的に検証し、意思決定の精度を高めます。
- 効率化案: 公図や測量図をデジタル化し、GIS(地理情報システム)やオンライン査定ツールを活用して、複数の「評価軸」を並列比較します。
- エンジニアの視点: 土地の形状(不整形地など)を数値化し、利用価値の減価要因をロジカルに説明することで、相続人間の感情論を「定量的データ」による議論へとシフトさせます。
まとめ:不動産は「共有」ではなく「分割」を基本に
不動産の「安易な共有」は将来のトラブルを誘発します。
「誰が引き継ぐべきか」「売却すべきか」の判断には、法務・税務・そして土地のポテンシャルを見抜く技術的な視点が欠かせません。

