【実務解説】知られざる選択肢「限定承認」:リスクを最小化する資産精算の仕組み

相続放棄の記事に続き、今回は「限定承認」について解説します。限定承認は、いわば「資産と負債の相殺精算」という高度なスキームであり、「リスクを限定した上での損益分岐点調査」と言えます。


「親の借金がいくらあるか分からないが、自宅だけは守りたい」

「負債を完済して余りが出るなら、その分は相続したい」

このような「不確実性」に直面した際、最強の武器となるのが「限定承認」です。

相続放棄が「全否定(すべてを捨てる)」であるのに対し、限定承認は「引き継いだプラスの財産の範囲内でのみ、マイナスの財産(借金)を支払う」という条件付きの相続です。

相続においてこの限定承認という手法を知っておくことは、非常に有益なリスクマネジメントとなります。


1. 「全員一致」という極めて高いハードル

限定承認は強力な制度ですが、手続き上の制約が相続放棄よりも厳格です。

  • 根拠: 相続放棄が一人でできるのに対し、限定承認は「相続人全員」が共同で行う必要があります(民法第923条)。
  • 具体例: 兄弟が3人いる場合、1人でも「単純承認(すべて引き継ぐ)」や「放棄」を希望すれば、限定承認の選択肢は消滅します。
  • 結論: 意思決定の合意形成(コンセンサス)が必須です。行政書士として、親族間の調整役となり、法的要件を満たす「総意の形成」をサポートすることが成功の鍵となります。

2. FP視点で見る「みなし譲渡所得税」の罠

限定承認を選択する際、税務面での高度なコスト計算が必要です。

  • 根拠: 限定承認をすると、被相続人から相続人へ資産が「時価で売却された」とみなされるため、含み益がある資産には「みなし譲渡所得税」が課される場合があります。
  • 具体例: 昔から持っている土地の価格が高騰している場合、手元に現金がないのに多額の税金が発生するリスクがあります。
  • 結論: FPの視点から、譲渡所得税のキャッシュフローを事前に試算し、「限定承認をしてまで守る価値がある資産か」を損益分岐点(Break-even point)で判断する必要があります。

3. 【効率化・DX視点】「清算手続き」の工数削減と工程管理

限定承認は、申し立てて終わりではありません。その後の「清算(債権者への支払い)」が本番です。

  • 根拠: 官報への公告、債権者への個別の届出、そして資産の競売や換価作業など、複雑なプロセスが発生します。
  • 具体例: 共有のガントチャートで清算スケジュールを管理します。期限のある公告手続きなどをタスク化し、漏れがないように「進捗の可視化」を図ります。
  • 結論: 煩雑な清算実務をシステム的に管理することで、遺族の心理的負担を軽減し、法的瑕疵のないクリーンな精算を完遂させることができます。

まとめ:不確実性への「保険」としての限定承認

限定承認は、「借金が多そうだが、もしかしたら資産が残るかもしれない」という状況における、非常に論理的な「保険」です。

ただし、手続きの難易度が高く、税務リスクも伴うため、独断での実行は推奨されません。

「とりあえず放棄」と決めてしまう前に、まずは資産と負債を天秤にかけ、限定承認の可能性を探る価値は十分にあります。

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見よう見まねでまずはホームページを立ち上げてみました。これから少しずつレベルアップしていくと思うので、長い目で見てやってください。

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