最終設計図を描く。遺言書とデジタル資産、そして「攻め」の承継(第3回)

皆さま、こんにちは。

第1回で「資産凍結のリスク」を、第2回で「家族信託というシステム設計」をお伝えしてきました。連載の最終回となる今回は、それらを完結させるための「最終リリース(遺言書)」と、現代の経営者が避けて通れない「デジタル資産の管理」について解説します。

製品開発において、どんなに優れた設計思想があっても、最終的な「仕様書(遺言書)」に不備があれば、製品は正しく動作しません。相続も全く同じです。


【結論】「認知症になってから」では遅すぎる。今すぐ「デジタル込の遺言書」を作成すべき

結論から申し上げます。

相続対策の完成形は、法的に堅牢な「公正証書遺言」と、目に見えない資産を可視化する「デジタルエンディングノート」のセット運用です。

認知症を発症して「判断能力」というアクセス権限を失う前に、家族が迷わず資産を継承できるルートを確定させておくことが、経営者としての最後の重要任務です。


【根拠】なぜ「今」確定させる必要があるのか?

  1. 遺産分割協議のデッドロック防止:『遺言書』がない場合、残された家族全員で「遺産分割協議」を行う必要があります。もし相続人の一人にでも認知症の方がいれば、協議は完全にストップし、家庭裁判所を通した煩雑な手続きが必要になります。
  2. デジタル資産の「消失」リスク:ネット証券、暗号資産、サブスクリプション、クラウド上の業務データ。これらは物理的な通帳がないため、本人がログイン情報を残さなければ、相続人がその存在すら気づけず、永遠に「紛失扱い」となるリスクがあります。
  3. 納税資金とキャッシュフローの確保:相続税の支払いは「現金」が原則です。早期に遺言書で配分を決め、生命保険や生前贈与を組み合わせることで、残された家族が「納税のために会社を売る」という本末転倒な事態を防げます。

【具体例】自筆証書遺言は「デバッグされていないコード」

ご自身で書く「自筆証書遺言」は手軽ですが、書き方のルールが厳格です。

日付の書き間違いや押印の不備など、わずかなミスで「バグ」が発生し、法的に無効となるケースが多々あります。これでは、家族を守るためのシステムとして機能しません。

エンジニアが本番環境へ移行する前にコードを検証するように、専門家が介在し、公証役場で作成する「公正証書遺言」を選ぶべきです。これは、いわば「コンパイル済みの実行ファイル」であり、高い確実性を持って動作します。


多角的な視点からのアドバイス

  • 行政書士の視点(コンプライアンス):法的に有効な遺言書は、家族間の紛争(争続)を未然に防ぐ最強の盾です。特に「遺留分」への配慮など、専門的な観点から「隙のない仕様書」を作成することが重要です。
  • ITの視点(セキュリティ・DX):パスワードを紙に書くのはリスクですが、誰にも教えないのはもっとリスクです。パスワードマネージャーの活用や、信頼できる家族だけに「マスターキー」を伝える仕組み(二要素認証の予備策など)の構築が、現代の相続対策には不可欠です。
  • FP・労務の視点(コスト):早期に承継プランを確定させることで、法人保険の活用や退職金の設計など、長期的な節税(コスト最適化)が可能になります。これは従業員の雇用を守ることにも直結します。

【AI活用提案】業務効率化のアドバイス

膨大な資産や想いを整理する作業は、非常に骨が折れるものです。ここでもAIを「思考の整理パートナー」として使いましょう。

AIによる「資産・想いの棚卸し」プロンプト

AIに対し、「私が経営している会社の内容と、家族への感謝の気持ち、そして将来会社をどうしてほしいかの断片的なメモを入力します。これらを整理して、遺言書の『付言事項(家族へのメッセージ)』のドラフトを、誠実で感動的な文章で作成して」と依頼してみてください。

事務的な配分だけでなく、AIと共に作成した「心のこもった付言事項」を添えることで、相続人全員が納得し、円満な承継へと導くことができます。


全3回の連載を通してお伝えしたかったのは、「相続対策は、過去の整理ではなく未来の設計である」ということです。

エンジニアとして35年、そして現在は行政書士として、皆さまの「大切な資産」と「想い」という大切なシステムが、次世代へスムーズに引き継がれるよう全力でサポートいたします。

まずは、身近な「デジタル資産のリストアップ」から始めてみませんか?


関連キーワード: 公正証書遺言、デジタル遺産、遺留分、付言事項、BCP、事業承継

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見よう見まねでまずはホームページを立ち上げてみました。これから少しずつレベルアップしていくと思うので、長い目で見てやってください。

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