【第2回】「やさしい日本語」とITツールによる迅速な情報共有
災害発生時、現場で最も重要なのは「情報の伝達速度」です。
日本人従業員には伝わっている情報が、外国人従業員に届かない。この「情報の空白」が、現場に致命的な混乱を招きます。
第2回となる今回は、言語の壁をテクノロジーと工夫で乗り越える「情報伝達の最適化」について解説します。
【結論】
災害時の情報共有は、「やさしい日本語」への標準化と、SNS等のプッシュ型ITツールの事前整備をセットで行うことが不可欠です。
【根拠】
1. 情報の標準化:英語より「やさしい日本語」
意外かもしれませんが、日本で働く外国人の多くにとって、高度な英語よりも、語彙を制限した「やさしい日本語」の方が理解しやすいというデータがあります(出入国在留管理庁の調査等)。
- ポイント: 「速やかに避難してください」ではなく「すぐに逃げてください」と伝える。一文を短くし、二重否定(「〜しなくもない」など)を避ける設計が重要です。
2. ITツールの活用:プッシュ型通知の仕組み
災害時、自社のホームページを見に来てもらう「プル型」の情報提供は機能しません。
- ポイント: 普段から使い慣れているLINEやMessenger、または防災専用アプリを活用し、強制的に通知が届く「プッシュ型」のラインを構築しておく必要があります。
3. 視覚情報の活用:エンジニア的インターフェース設計
言葉に頼りすぎない「UI(ユーザーインターフェース)」の視点を取り入れます。
- ポイント: 文字情報だけでなく、ピクトグラム(図記号)や色(赤=危険、緑=安全)を活用した視覚的な指示系統をマニュアル化します。
【3軸からの考察】
- コンプライアンス視点(行政書士):情報の「発信」だけでなく、相手が「受領・理解」したことを確認するまでが安全配慮義務の範囲です。ITツールでの安否確認応答は、そのエビデンス(証拠)としても有効です。
- コスト・労務視点(社労士・FP):緊急時にパニックに陥った従業員のメンタルケアは、その後の復職率に影響します。「会社が自分たちを気にかけてくれている」というメッセージを即座に送ることは、無形のリテンション(引き留め)コストの低減につながります。
- 効率化・DX視点(エンジニア):多言語対応の防災アプリ(例:Safety tips)の導入を会社指定にすることで、社内リソースを使わずに高度な多言語情報を従業員に提供できます。既存の技術(APIや既存アプリ)を使い倒すのがお勧めです。
【具体例:言い換えのテンプレート】
現場ですぐに使える「やさしい日本語」の例です。
- × 避難勧告が出ました。→ ○ 危ないです。すぐに逃げてください。
- × 余震に注意してください。→ ○ また地震が来ます。気をつけてください。
- × 高台へ移動してください。→ ○ 高いところへ行ってください。
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次回予告:
第3回は「生活・宗教編」です。避難所での食事(ハラール対応等)や、文化的な違いから生じるトラブルを未然に防ぐ方法についてお伝えします。

