認知症になったあとは、貯金を下ろしたり契約を解除したりすることが難しくなるため、そうなる前に対策を講じる必要があります。
このほかに、認知症でもう一つ注意しなければならないのは、残された相続人になる場合です。
よくあるケースとして、老夫婦の旦那さんが亡くなったときに配偶者が認知症を患っている場合があります。例えば、その認知症のおばあさんと子供が二人いるとします。旦那さんが遺言を残していればそれに従いますが、遺言を作成していない場合はすべての法定相続人の間で遺産分割を行い、遺産分割協議書を作成する必要があります。この協議書を作成しないと、預金を下ろしたり土地や建物の名義変更ができません。
しかし、その法定相続人の中に認知症などで意思能力や弁理能力がないと見なされる人がいる場合、遺産分割協議書を作成することができません。(遺産分割協議書は全相続人の合意が必要ですが、認知症の人の意思が不確かとされるためです)
では、どうすればいいのでしょうか。ずばり法定後見人をつけるしかありません。しかしそうなると、これまでに書いてきたように、家族の希望通りにはならない可能性が出てきます。後見人は被後見人(おばあちゃん)の利益を第一に考えて行動するため、家族全体の利益を考えた場合でも認められないことがあります。さらに、後見は一時的なものではなく、おばあちゃんが亡くなるまで続き、その間に年間数十万円の費用がかかります。
では、どうすればよいのでしょうか。やはり、そうした事態になる前に対策を講じる必要があります。具体的には、1. 遺言を作成する、2. 任意後見契約を結ぶ、3. 家族信託を行う、の3つです。
どれが適しているかは、持っている資産や家族の状況によりますが、上記の順番が一般的なセオリーと言えるでしょう。
それぞれの詳細については、また別の回でお話ししますが、どれもメリット・デメリットがあり、また様々な制約もありますので、専門家に相談することがおすすめです。