入管手続きにおける「法定調書合計表」の提出について、発行時期の関係で最新版が間に合わない場合の「代替処理」が認められています。
今回は、公式Q&A(Q12)に基づき、申請時点で最新の書類が準備できない場合の論理的な対処法について解説します。
1. 結論:「提出可能な最新の書類」で代用が可能
申請のタイミングにおいて、前年分の「給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表」がまだ完成しておらず提出が不可能な場合に限り、その時点で提出できる最新の書類(=前々年分の法定調書合計表)を提出することで受理されます。
2. 根拠:書類の発行サイクルと申請タイミングの不一致
入管庁の回答(A12)に基づき、実務上の運用ルールを構造化します。
① 法定調書合計表の更新時期
法定調書合計表は、通常、毎年1月末までに税務署へ提出するものです。そのため、1月上旬から中旬にかけて申請を行う場合、物理的に「前年分」がまだ手元にないという状況が発生します。
② 入管側の受付ルール
入管は、企業のカテゴリー判定(Q11参照)を行うためのエビデンスを求めています。最新版がない場合は、一つ前の世代(前々年分)のデータを用いて、暫定的に企業の規模や継続性を評価する運用を行っています。
③ 提出時のポイント
- 無理に最新を待たない: 在留期限が迫っている場合、最新版の完成を待って申請が遅れる(=オーバーラン)ことは最大のリスクです。旧年分で速やかに申請(コミット)することが優先されます。
- 後日提出の要否: 基本的には申請時点で受理されますが、審査の過程で入管から「最新版が完成したら追加提出してください」と指示(リクエスト)が出る場合もあります。
3. 具体例:1月に申請する場合のシミュレーション
実務において、年明けすぐの申請は以下のようなデータの「世代管理」が必要になります。
- 2026年1月15日に申請する場合:
- 2025年分の合計表はまだ作成中であることが多い。
- この場合、2024年分(前々年分)の合計表を提出する。
- 2026年2月に申請する場合:
- 1月末に税務署へ提出が完了しているはず。
- この場合は、2025年分(前年分)の合計表を提出する。
このように、カレンダー上の日付と税務スケジュールの相関関係によって、提出すべき「バージョン」が決定されます。
【多角的なアドバイス】
- コンプライアンス(行政書士)視点: 「前々年分」を出す場合でも、税務署の受付印があるもの、または電子申告の「受信通知(メール詳細)」を必ずセットで準備してください。単なる控え(下書き)では、カテゴリー判定のエビデンスとして機能しません。
- コスト・労務(社労士)視点: 1月は年末調整や法定調書の作成で総務・経理部門の負荷が最大化する時期です。入管申請のために「至急、今年の合計表を!」と無理に急かして社内リソースを圧迫させるより、制度に則って前々年分を活用するほうが、組織全体のコストパフォーマンスが高まります。
- 効率化・DX(エンジニア)視点: e-Tax(国税電子申告・納税システム)で法定調書を提出していれば、送信後すぐに「受信通知」をデジタルデータとして取得できます。これを活用することで、紙の控えを探したりスキャンしたりする手間を省き、在留申請オンラインシステムへのアップロードまでスムーズな「パイプライン」を構築できます。
次回予告
次回は、「Q13:国内の大学に在籍している留学生を採用したいのですが、卒業見込みの時点で在留資格変更許可申請はできますか。」について詳しく解説します。
生成AI活用の提案
会社の決算月や申請予定日をAIに入力し、「いつの時点のどの書類が必要か」を自動判定する「必要書類カレンダー」を作成しましょう。また、旧年分の書類を出す際に添える「最新版が未完成である旨を説明する簡易的な上申書」のドラフト作成もAIが得意とする領域です。

