雇用契約書の「必須要件」:入管審査と労働法規を両立させる構成
外国人雇用を推進する中小企業の経営者・人事担当者の皆様、こんにちは。行政書士の山本です。
今回は、公式Q&A(Q19)に基づき、提出する雇用契約書(または労働条件通知書)に盛り込むべき必須内容を解説します。
1. 結論:労働基準法と入管法の「ダブル・チェック」が必要
入管に提出する雇用契約書等には、日本の労働基準法に基づき明示が必要な事項に加え、在留資格の該当性を判断するための情報が含まれている必要があります。
具体的には、「業務内容」「契約期間」「就業場所」「報酬額」「就業時間」などの基本属性が、明確に定義されていなければなりません。
2. 根拠:審査官がチェックする「契約の整合性」
入管庁の回答に基づき、雇用契約書に記載すべき主要項目を構造化します。
① 業務内容(職務のスコープ)
- 申請する在留資格(例:技術・人文知識・国際業務)の活動範囲に合致しているか。
- 抽象的な「事務」ではなく、「海外取引先との通訳・翻訳および貿易実務」といった具体的なタスクが記述されている必要があります。
② 報酬(対価の妥当性)
- 日本人と同等額以上の報酬であること。
- 月給、日給、時間給の別や、諸手当の構成が明文化されている必要があります。
③ 期間と場所(稼働条件)
- 雇用期間(期間の定めがある場合はその期間)や、実際に勤務する場所。
- 派遣や出向の場合は、その形態も明確にする必要があります。
3. 具体例:トラブルを未然に防ぐ「例外処理」の記述
実務において、契約書の不備は「不許可」や「追加資料提出」の主な原因となります。
- NGパターン: 「社内規定による」という一言で済ませているもの。→ 入管審査においては、その「規定」自体の提出を求められることになり、二度手間が発生します。契約書単体で条件が完結していることが望ましいです。
- OKパターン: 「月額〇〇円(基本給〇〇円、固定残業代〇〇円を含む)」と内訳を明示し、業務内容も「生産技術エンジニアとして、〇〇ラインの自動化設計に従事する」と、本人のバックグラウンド(専門性)とのリンクが見える記述。
【多角的なアドバイス】
- コンプライアンス(行政書士)視点: 雇用契約書は、会社と本人の双方が合意し、署名・捺印した「原本の写し」を提出します。また、本人が内容を理解していることを示すため、本人の母国語や英語を併記した「二か国語表記(対訳形式)」での作成を強く推奨します。これは入管に対する誠実な姿勢の証明(エビデンス)となります。
- コスト・労務(社労士)視点: 2024年4月から労働条件通知書の明示事項が変更(就業場所・業務内容の変更の範囲の追加など)されています。古いテンプレートを使い回すことは「レガシーシステム」を使い続けるようなリスクを伴います。最新の労基法に準拠したフォーマットへのアップデート(バージョンアップ)が不可欠です。
- 効率化・DX(エンジニア)視点: 雇用契約書を「電子契約(クラウドサイン等)」で締結することで、物理的な郵送やスキャンの手間を省き、そのままPDFを在留申請オンラインシステムへデプロイできます。これにより、書類の紛失リスクをゼロにし、リードタイムを大幅に短縮する「継続的デリバリー(CD)」が可能になります。
関連キーワード
雇用契約書、労働条件通知書、日本人と同等額以上の報酬、業務内容の具体性、二か国語併記、労働基準法
次回予告
次回は、「Q20:現在就労資格を有していない外国人を採用する場合、どのような雇用契約書を作成して提出すればよいですか。」について解説します。
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