未入国の外国人を採用:就労資格取得前の「雇用契約書」はどう書く?
外国人雇用を検討中の中小企業の皆様、こんにちは。行政書士の山本です。
就労資格(在留資格)をまだ持っていない外国人を採用する場合も、あらかじめ「条件付き」で契約内容を確定させておく必要があります。
今回は、公式Q&A(Q20)に基づき、現在就労資格のない外国人と交わすべき雇用契約書の構成について論理的に解説します。
1. 結論:「在留資格の取得」を停止条件とする契約
現在就労資格を有していない外国人と契約を交わす際は、「日本国における就労可能な在留資格の取得」を雇用開始の条件とする旨を明記した雇用契約書(または労働条件通知書)を作成し、提出する必要があります。
2. 根拠:入管法上の「条件付き契約」の必要性
入管庁の回答に基づき、未取得者との契約において不可欠な要素を構造化します。
① 在留資格取得の条件明記
- まだ資格を持っていない以上、通常の契約書では「不法就労を約束する契約」と誤解されるリスクがあります。
- そのため、「しかるべき在留資格が許可された場合に、本契約の効力が発生する」という停止条件を組み込むことが、コンプライアンス上の必須仕様となります。
② 職務内容と報酬の確定
- 資格を持っていない段階であっても、入管側は「この外国人にどのような業務をさせ、いくら支払うのか」を厳格に審査します。
- したがって、Q19で解説した「業務内容」「報酬」「就業場所」などのパラメータは、この段階ですべて確定させておく必要があります。
3. 具体例:契約書に盛り込むべき「条件条項」の記述
実務において、契約書には以下のような一文(条項)を加えることが一般的です。
- 推奨される記述例:「本契約は、乙(外国人本人)が日本国において就労可能な在留資格を取得することを条件として発効するものとする。万が一、在留資格が不許可となった場合、本契約は当然に失効する。」
このように記述することで、企業側は「ビザが取れなかったのに雇用義務だけが残る」というリスク(例外エラー)を回避でき、入管側に対しても「法を遵守して受け入れ準備をしている」ことを証明できます。
【多角的なアドバイス】
- コンプライアンス(行政書士)視点: 海外から呼び出す(在留資格認定証明書交付申請)場合、この「条件付き雇用契約書」が審査のメインエビデンスとなります。入社予定日は、標準的な審査期間(1〜3ヶ月)を考慮し、「在留資格取得後、速やかに」あるいは「202X年X月X日(または許可取得日以降)」といった柔軟な記述にしておくと、スケジュールのズレにも対応しやすくなります。
- コスト・労務(社労士)視点: 契約締結から入社(資格取得)までの期間は、まだ労働関係が発生していないため、賃金の支払いや社会保険への加入義務は生じません。この期間の扱いを明確にしておくことで、労務上の予期せぬコスト発生を抑えることができます。
- 効率化・DX(エンジニア)視点: 海外居住者との契約締結には、電子署名サービス(クラウドサイン等)の活用が非常に有効です。物理的な郵送(EMS等)の手間とコストを削減できるだけでなく、タイムスタンプによって「いつ合意されたか」の証跡が残るため、入管への提出書類としての信頼性も高まります。
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次回予告
次回は、「Q21:在留資格認定証明書交付申請や在留資格変更許可申請において、雇用予定者との雇用契約書が作成されていない段階で申請はできませんか(地方出入国在留管理局から許可が出た後、正式に雇用契約書を作成する予定です)」について解説します。
生成AI活用の提案
採用予定者の「履歴書」と「募集要項」をAIに読み込ませ、在留資格の要件(技術・人文知識・国際業務など)に最適化された「条件付き雇用契約書」のドラフトを作成しましょう。多言語対訳(日本語・英語など)も同時に生成することで、海外の本人への説明工数を大幅に削減できます。

