【事業承継・相続 特集】第9回:経営者個人の「相続」と会社の「承継」。連動して備える遺言と個人資産防衛

中小企業の経営者のみなさま、お疲れ様です。

前回の第8回では、会社を誰に・どのように引き継ぐかという3つの手法(親族・従業員・M&A)のメリット・デメリットを比較しました。

連載の終盤となる第9回は、事業承継の「最終章」として、経営者様ご自身の最大の実務課題である「個人の相続」にスポットを当てます。

実は、事業承継を進める上で最も恐ろしいのは、「会社の承継(新社長へのバトンタッチ)」と「個人の相続(財産の分け方)」を切り離して考えてしまうことです。ここを連動させて対策しておかないと、現社長に万が一のことがあった際、良かれと思って残した個人資産が原因で親族間に深い亀裂が入り、結果として会社経営までをも巻き込む大トラブルに発展してしまいます。

今回は、会社経営を揺るがさないための「個人資産の防衛策」と「遺言」のリアルな活用法を解説します。


経営者の相続で最も多い「最大の悲劇」とは?

一般の家庭であれば、「遺産をきれいに等分に分ける」ことが公平な相続と言えます。しかし、経営者の場合はこれが通用しません。なぜなら、経営者の遺産の大部分が「自社株」や「工場の土地・建物」といった、切り分けることができない『事業用資産』だからです。

ここに、よくある悲劇の典型例があります。

  • 「公平に分けた結果、会社が破綻する」ケース:先代社長が亡くなり、遺産として「3億円相当の自社株・工場敷地」と「現預金3,000万円」が残されたとします。子どもは、会社を継ぐ長男と、会社に全く関係のない長女の2人です。法律通り(法定相続分)に半分ずつ「1億6,500万円」の価値になるよう遺産を分けようとすると、長男が自社株と工場を引き継ぐ一方で、長女に対して不足する「1億3,500万円」の現金を支払わなければならなくなります(これを代償分割といいます)。長男にそんな大金が用意できるはずもなく、結果として長女に会社の株や工場の土地がバラバラに分散して相続されてしまうか、長女へ支払うために会社の資金を無理に切り崩して経営が悪化するという事態に陥るのです。

会社を継がない親族から「不公平だ」という声が上がるのは、感情論だけではありません。残された「分けることができる個人資産(現金など)」が少なすぎることに原因があるのです。


会社と家族を悲劇から守る、連動型の「2つの予防対策」

このような最悪のシナリオを未然に防ぎ、後継者が安心してモノづくりに専念できる環境を作るためには、次の2つのアプローチを今から連動して進める必要があります。

対策①:遺言書で「事業用資産」を後継者に100%集中させる

最もシンプルで強力な防衛策は、公正証書による「遺言書」を作成することです。

遺言書の中に、「自社株、工場の土地、建物、および事業に関連する一切の資産は、後継者である長男に相続させる」とはっきりと明記します。これにより、経営権の分散を確実に防ぐことができます。

ただし、ここで注意しなければならないのが「遺留分(いりゅうぶん)」という法律上の最低限の取り分です。会社を継がない子どもの遺留分を侵害するような極端な遺言を作ってしまうと、後から「遺留分を侵害されたから、その分のお金を払え」と裁判沙汰(遺留分侵害額請求)になるリスクがあります。遺言を作る際は、必ずこの遺留分に配慮した設計が必要です。

対策②:生命保険や役員退職金を活用した「財産のバランス調整」

後継者に事業資産を集中させる代わりに、会社を継がない子どもたちにも納得してもらえるよう、手当て(現金の確保)を行います。

  • 生命保険の活用:現社長を被保険者、受取人を「後継者(長男)」とした生命保険に加入しておきます。万が一の際、長男に一括で保険金(現金)が入るため、その現金を会社を継がない長女への「代償金(バランスを取るためのお金)」として支払うことができます。
  • 役員退職金の生前準備:現社長の引退時に会社から適切な役員退職金を支給し、会社の現金(内部留保)を社長個人の現預金へと移しておきます。これにより、相続が発生した時に、会社を継がない親族へきれいに分けられる「個人資産(現金)」の枠を増やしておくことができます。

経営者の相続対策は、究極の「リーダーシップ」

これまで会社のために、そして家族のために、身を粉にして働いてこられた経営者のみなさまにとって、「自分が亡くなった後のことで家族が揉める」ことほど悲しいことはないはずです。

事業承継と相続の対策とは、単なる「節税」のテクニックではありません。

「次の社長が迷わずに会社を引っ張っていける土台」を作り、同時に「自分の大切な家族がずっと仲良く暮らしていける安心」を遺す、経営者としての最後の、そして最も重要なリーダーシップなのです。

「うちは家族の仲が良いから遺言なんてなくても大丈夫」という油断が、一番危険です。お金や経営権が絡むと、人は変わってしまうことがあります。揉めないためのルールを元気なうちに作っておくことこそが、本当の優しさであり「予防法務」の真髄です。


会社と個人の資産をトータルで診断します

「自分の今の資産バランスだと、将来子どもたちが揉めないだろうか?」「遺言書を書きたいけれど、何から書けばいいか分からない」

当事務所では、経営面を診る中小企業診断士の視点と、確実な遺言・相続手続きを担う行政書士の視点、そしてお金の計画を立てるファイナンシャルプランナー(FP)の視点を掛け合わせ、貴社の経営権を守りつつ、ご家族全員が安心できる「オーダーメイドの相続・承継ロードマップ」をご提案しています。

大切なモノづくりの火を絶やさず、家族の絆を守るために。まずは現状の資産の棚卸しから、一緒に始めてみませんか?


次回予告:最終回(第10回)「未来へつなぐロードマップ。持続可能な『事業承継計画』の作り方」

本連載の締めくくりとなる次回は、これまで学んできたすべての要素(資産・技術・組織・相続)を一つの「設計図」に落とし込む方法です。10年先を見据えた「事業承継計画書」の具体的な作り方と、専門家を上手に使いこなすコツをお伝えします。

【個別のご相談も承っております】

「うちの場合の遺留分ってどれくらいになる?」「事業資産と個人資産の分け方についてアドバイスが欲しい」など、経営者個人の相続に関するご不安があれば、どうぞお気軽にご相談ください。親身になって未来を守るお手伝いをいたします。

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見よう見まねでまずはホームページを立ち上げてみました。これから少しずつレベルアップしていくと思うので、長い目で見てやってください。

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