~会社を支えるバックオフィス業務を効率化する~
前回の記事では、社長自身の仕事をAIで効率化する方法について解説しました。
メール作成、会議準備、企画書のたたき台作成、社内通知文の作成など、AIは経営者の時間を生み出すための有効な道具になります。
今回は、会社の日常業務を支える総務・経理業務に焦点を当てます。
中小企業では、総務や経理の担当者が限られていることも多く、ひとりの担当者が幅広い業務を抱えているケースも少なくありません。
例えば、
- 請求書や領収書の整理
- 社内文書の作成
- 契約書や届出書類の確認
- 従業員への案内文作成
- 会議資料の準備
- 社内ルールの整備
- 行政手続きに必要な資料の準備
など、内容は多岐にわたります。
こうした業務は、直接売上を生む仕事ではないかもしれません。
しかし、会社を安定して運営するためには欠かせない重要な仕事です。
AIは、このようなバックオフィス業務の負担を軽くし、会社全体の生産性を高めるために活用できます。
総務・経理業務は「会社の土台」
総務や経理の仕事は、外から見ると地味に見えるかもしれません。
しかし、実際には会社経営の土台となる業務です。
例えば、請求書の発行が遅れれば、入金が遅れる可能性があります。
契約書の確認が不十分であれば、後々トラブルになるかもしれません。
従業員への社内ルールの説明が曖昧であれば、現場で混乱が生じることもあります。
つまり、総務・経理業務は単なる事務作業ではなく、
会社のお金、情報、人、ルールを整える仕事
です。
この部分が整っている会社は、経営判断もしやすくなります。
反対に、日々の事務が属人的で整理されていないと、社長や担当者の負担が増え、重要な仕事に時間を使いにくくなります。
だからこそ、AIを活用して総務・経理業務を効率化することには大きな意味があります。
社内文書の作成を効率化する
総務業務でAIを使いやすいのが、社内文書の作成です。
例えば、
- 従業員へのお知らせ
- 社内ルールの案内
- 研修案内
- 健康診断の案内
- 年末年始休業のお知らせ
- 勤怠ルールの周知
- 安全衛生に関する注意喚起
などです。
こうした文書は、内容自体は難しくなくても、文章にするのに意外と時間がかかります。
また、表現が強すぎると従業員に冷たく伝わってしまい、逆に柔らかすぎると重要性が伝わりません。
AIを使えば、目的に合わせて文面を整えることができます。
例えば、次のように依頼します。
従業員向けに、年末年始休業のお知らせ文を作成してください。
休業期間は12月29日から1月4日までです。
取引先への連絡は12月25日までに済ませるよう、やわらかく伝えてください。
このように指示すれば、社内向けの案内文のたたき台を作成できます。
さらに、
もう少し丁寧にしてください。
もう少し短くしてください。
パート従業員にも分かりやすい表現にしてください。
と追加で依頼すれば、文章の雰囲気を調整できます。
社内ルールの説明文を分かりやすくする
中小企業では、社内ルールが口頭で伝えられていることも少なくありません。
もちろん、少人数の会社ではそれで回ることもあります。
しかし、人が増えたり、外国人従業員を雇用したり、拠点が増えたりすると、口頭だけでは限界が出てきます。
例えば、
- 欠勤連絡の方法
- 有給休暇の申請方法
- 交通費精算のルール
- 作業服の管理
- 社用車の使用ルール
- スマートフォンやパソコンの利用ルール
などは、文書化しておくことでトラブル防止につながります。
AIは、こうした社内ルールを分かりやすい説明文にするのが得意です。
例えば、
従業員向けに、交通費精算のルールを分かりやすく説明する文書を作成してください。
内容は、月末締め、翌月5日までに申請、領収書の添付が必要、というルールです。
このように入力すると、読みやすい案内文を作成できます。
行政書士の視点で見ると、社内ルールの文書化は、将来のトラブル防止にもつながります。
口頭の約束や曖昧な運用は、後で「言った・言わない」の問題になりがちです。
AIを使って文書化の第一歩を踏み出すことは、会社を守る意味でも有効です。
規程やマニュアルのたたき台を作る
総務業務では、社内規程や業務マニュアルの整備も重要です。
例えば、
- 就業規則
- 情報管理規程
- 車両管理規程
- 出張旅費規程
- ハラスメント防止規程
- 業務マニュアル
- 新入社員向け説明資料
などです。
ただし、規程類は会社のルールそのものです。
AIに作らせたものを、そのまま正式な規程として使うのは危険です。
会社の実情に合っていなかったり、法律と合っていなかったりする可能性があるからです。
AIはあくまで、
たたき台を作る道具
として使うのが基本です。
例えば、
中小企業向けの情報管理ルールのたたき台を作成してください。
対象は従業員20名程度の製造業です。
個人情報、取引先情報、図面データ、USBメモリの使用について含めてください。
このように依頼すると、検討すべき項目を整理できます。
そのうえで、自社の実態に合わせて修正し、必要に応じて専門家に確認する流れが望ましいでしょう。
経理資料の整理にも活用できる
経理業務でも、AIは役立ちます。
ただし、会計処理そのものをAIに丸投げするというより、情報整理や確認作業の補助として使うのが現実的です。
例えば、
- 経費精算ルールの説明文作成
- 領収書提出の案内文作成
- 請求書発行フローの整理
- 月次処理のチェックリスト作成
- 経理担当者向けマニュアル作成
- 会計ソフト入力前の項目整理
などです。
特に有効なのは、チェックリスト化です。
例えば、
月末の経理処理で確認すべき項目をチェックリストにしてください。
請求書、領収書、経費精算、売掛金、買掛金、給与関連を含めてください。
と依頼すれば、確認漏れを防ぐためのリストを作ることができます。
経理業務は、ひとつの漏れが入金遅れや支払遅れにつながることがあります。
AIを使って作業手順を見える化することで、属人化を防ぎやすくなります。
契約書や行政手続きの確認前の整理に使う
行政書士の業務に近い分野として、契約書や行政手続きに関する資料整理があります。
例えば、
- 契約書の内容を読みやすく要約する
- 許認可申請に必要そうな資料を洗い出す
- 行政手続きの流れを整理する
- 取引条件の確認ポイントをまとめる
といった使い方です。
ただし、ここは特に注意が必要です。
契約書や許認可、法令に関する内容は、AIの回答だけで判断してはいけません。
AIは便利ですが、法律上の正確性を保証するものではありません。
例えば、契約書についてAIに聞く場合でも、
この契約書の内容を、専門家に確認する前の準備として、分かりやすく要約してください。
特に、契約期間、支払条件、解除条件、損害賠償、秘密保持の項目を整理してください。
というように、確認前の整理として使うのが適切です。
最終的な判断は、行政書士、弁護士、税理士、社会保険労務士など、内容に応じた専門家に相談することが重要です。
外国人従業員向けの総務文書にも活用できる
外国人を雇用している企業では、総務文書の分かりやすさが特に重要です。
日本語がある程度できる外国人従業員でも、社内文書特有の表現や漢字の多い文章は難しく感じることがあります。
例えば、
- 有給休暇の申請方法
- 欠勤・遅刻の連絡方法
- 給与明細の見方
- 社宅や寮のルール
- 安全衛生の注意事項
- 退職時の手続き
などは、分かりやすく説明しておく必要があります。
AIを使えば、通常の日本語文を「やさしい日本語」に書き換えることができます。
例えば、
次の文章を、外国人従業員にも分かりやすい、やさしい日本語にしてください。
「有給休暇を取得する場合は、原則として取得希望日の3日前までに、所定の申請書を所属長へ提出してください。」
このように依頼すると、より簡単な表現に直すことができます。
外国人雇用では、在留資格の手続きだけでなく、入社後の定着支援も大切です。
社内ルールが分かりやすく伝わることは、職場での安心感やトラブル防止にもつながります。
総務・経理でAIを使う際の注意点
総務・経理業務には、会社の重要情報が多く含まれます。
そのため、AIを使う際には特に情報管理に注意が必要です。
1 個人情報を入力しない
従業員の氏名、住所、給与、マイナンバー、健康情報などは、非常に重要な個人情報です。
AIにそのまま入力することは避けるべきです。
必要な場合は、名前を「Aさん」「Bさん」に置き換えるなど、個人が特定されない形に加工して使うことが大切です。
2 取引先情報や機密情報を入力しない
取引先名、単価、見積条件、図面情報、未公開の事業計画なども注意が必要です。
社外に出せない情報は、AIにも安易に入力しないことが基本です。
3 法律・税務・労務の判断は専門家に確認する
AIは、法律や税務、労務に関する説明もしてくれます。
しかし、その内容が常に正しいとは限りません。
特に、
- 就業規則
- 雇用契約
- 社会保険
- 税務処理
- 許認可
- 在留資格
などについては、専門家への確認が必要です。
AIは便利な補助者ですが、責任を負ってくれる存在ではありません。
まずは「文書作成」と「チェックリスト化」から始める
総務・経理でAIを使い始めるなら、まずは次の2つがおすすめです。
1つ目は、文書作成です。
社内案内文、お知らせ、説明資料など、日々の文章作成に使うと効果を実感しやすいです。
2つ目は、チェックリスト化です。
月末処理、入社手続き、退職手続き、請求書発行、契約書確認などをチェックリストにすると、業務の抜け漏れを防ぎやすくなります。
例えば、
中小企業の総務担当者向けに、入社手続きのチェックリストを作成してください。
雇用契約書、社会保険、雇用保険、通勤手当、作業服、社内ルール説明を含めてください。
このような使い方であれば、専門知識がなくても始めやすいでしょう。
まとめ
総務・経理業務は、会社を支える大切なバックオフィス業務です。
日々の事務作業を整えることは、会社のお金、人、情報、ルールを守ることにつながります。
AIは、
- 社内文書の作成
- 社内ルールの説明
- 規程やマニュアルのたたき台作成
- 経理処理のチェックリスト化
- 外国人従業員向けのやさしい日本語化
などに活用できます。
一方で、個人情報や機密情報の入力には十分注意が必要です。
また、法律、税務、労務、許認可に関する最終判断は、必ず専門家に確認することが大切です。
AIを上手に使えば、総務・経理担当者の負担を減らし、会社全体の業務品質を高めることができます。
まずは身近な社内文書やチェックリスト作成から、少しずつ活用してみてはいかがでしょうか。
次回予告
第5回は、
「採用活動にAIを活用する」
をテーマに、求人票の作成、応募者対応、面接質問の整理、外国人材採用における注意点などについて解説します。

