― Codexで始める業務改善10のヒント【第7回】
人手不足を背景に、外国人スタッフを雇用する中小企業が増えています。
製造業、建設業、介護、外食、宿泊、農業、サービス業など、さまざまな現場で外国人材が活躍しています。
しかし、外国人スタッフを雇用する場合、在留資格の手続きや雇用契約だけでなく、職場でのコミュニケーションも大きな課題になります。
作業内容がうまく伝わらない。
注意事項を説明したつもりでも理解されていない。
日本人スタッフとの間で誤解が生じる。
危険作業や禁止事項が十分に伝わらない。
わからないことがあっても、本人が質問できない。
職場のルールをどこまで理解しているかわからない。
こうした問題は、本人の能力だけの問題ではありません。
説明の仕方、資料の作り方、確認の仕組み、相談しやすい環境など、会社側の受け入れ体制にも関係します。
第7回では、外国人スタッフにも伝わる職場づくりについて、やさしい日本語、多言語対応、そしてAIやCodexを活用した業務改善の視点から考えていきます。
外国人雇用は「採用して終わり」ではない
外国人スタッフを雇用するとき、多くの会社がまず気にするのは在留資格や雇用手続きです。
もちろん、これは非常に重要です。
在留資格の確認、就労できる業務内容、在留期限、雇用契約、労働条件通知書、社会保険、税金、更新時期の管理など、会社として確認すべきことは多くあります。
しかし、外国人雇用を安定させるためには、手続きだけでは足りません。
実際に働き始めてから、
・仕事の指示が伝わるか
・安全ルールを理解しているか
・職場のマナーを共有できているか
・困ったときに相談できるか
・教育内容が記録されているか
・日本人スタッフとの関係がうまくいっているか
といった点が重要になります。
外国人スタッフが長く安心して働くためには、職場の中で「伝わる仕組み」を作ることが欠かせません。
「日本語で説明した」は「伝わった」と同じではない
現場では、よくこのようなことが起きます。
「ちゃんと説明したのに、できていなかった」
「前にも言ったのに、また同じミスをした」
「わかったと言っていたのに、実際には理解していなかった」
これは外国人スタッフに限った話ではありません。
日本人の新人でも起きることです。
ただし、外国人スタッフの場合、日本語力の差や文化の違いによって、より起きやすくなることがあります。
たとえば、日本語の「大丈夫です」は、場面によって意味が変わります。
「問題ありません」という意味で使うこともあれば、
「いりません」という意味で使うこともあります。
また、「適当にやっておいて」「なるべく早く」「ちゃんとして」「いい感じに」といった表現は、日本人同士では何となく通じることがありますが、外国人スタッフには非常にわかりにくい場合があります。
つまり、会社側が「説明した」と思っていても、相手に正しく伝わっているとは限りません。
大切なのは、説明したかどうかではなく、相手が理解し、実際に行動できる形になっているかです。
やさしい日本語とは何か
外国人スタッフへの説明で役立つ考え方の一つが「やさしい日本語」です。
やさしい日本語とは、難しい言葉や複雑な表現を避け、相手に伝わりやすい形にした日本語のことです。
たとえば、
「作業終了後、速やかに報告してください」
という表現は、
「仕事が終わったら、すぐにリーダーに言ってください」
のように言い換えることができます。
また、
「異常を発見した場合は、直ちに作業を中止してください」
という表現は、
「いつもと違うことがあったら、すぐに作業を止めてください。リーダーを呼んでください」
のようにすると、行動が具体的になります。
やさしい日本語で大切なのは、単に言葉を簡単にすることではありません。
誰が、何を、いつ、どうするのかをはっきりさせることです。
たとえば、次のような工夫が役立ちます。
・一文を短くする
・難しい漢字を減らす
・専門用語には説明をつける
・あいまいな表現を避ける
・主語を省略しすぎない
・禁止事項ははっきり書く
・数字や時間は具体的に書く
・写真や図を使う
・重要なことは繰り返し伝える
これは外国人スタッフだけでなく、日本人の新人やパート社員にも役立ちます。
やさしい日本語は、職場全体のコミュニケーションをわかりやすくするための考え方でもあります。
ChatGPTで説明文をやさしい日本語にする
やさしい日本語の文章を作るとき、ChatGPTは非常に役立ちます。
たとえば、今ある作業手順書や社内ルールを入力して、
「この文章を外国人スタッフにも伝わるやさしい日本語にしてください」
「一文を短くして、具体的な行動がわかるようにしてください」
「難しい言葉を使わずに、現場で使える表現にしてください」
「注意事項を箇条書きにしてください」
「新人向けの説明文にしてください」
と依頼することで、文章のたたき台を作ることができます。
たとえば、もとの文章が次のようなものだとします。
「作業中に異常を確認した場合は、速やかに上長へ報告し、指示があるまで作業を中断すること」
これをやさしい日本語にすると、
「作業中に、いつもと違うことがあったら、すぐに作業を止めてください。リーダーに言ってください。リーダーが『始めていいです』と言うまで、作業をしないでください」
のようにできます。
もちろん、AIが作った文章をそのまま使うのではなく、現場の作業内容に合っているか、人が確認する必要があります。
特に安全に関わる内容は、必ず現場責任者が確認することが大切です。
多言語対応は「翻訳すれば終わり」ではない
外国人スタッフが増えると、多言語対応を考える会社もあります。
母語で説明できれば、理解しやすくなる場面はあります。
しかし、多言語対応は単に翻訳すれば終わりではありません。
なぜなら、翻訳した文章が正しくても、現場の作業内容や会社のルールが相手に伝わるとは限らないからです。
たとえば、日本語の社内ルールをそのまま翻訳しても、文章が長すぎたり、文化的な前提が違ったりすると、理解しにくい場合があります。
また、専門用語や業界用語は、翻訳しても意味が伝わりにくいことがあります。
大切なのは、
・まず日本語をわかりやすくする
・そのうえで必要に応じて翻訳する
・写真や図で補足する
・本人が理解できたか確認する
・現場で実際に使える表現にする
という順番です。
日本語の文章が難しいまま翻訳すると、翻訳後の文章も難しくなります。
そのため、多言語対応の前に、まず日本語を整理することが重要です。
写真・図・チェックリストを組み合わせる
外国人スタッフに作業内容を伝えるときは、文章だけに頼らないことも大切です。
現場作業では、写真や図があるだけで理解しやすくなることがあります。
たとえば、
・正しい部品の向き
・使う工具
・押すボタン
・危険な場所
・触ってはいけない部分
・完成品の良い例、悪い例
・清掃する場所
・保護具の付け方
こうした内容は、写真があると一目で伝わります。
また、チェックリストを使うことで、確認漏れを防ぎやすくなります。
たとえば、作業前チェックとして、
・手袋をつけましたか
・保護メガネをつけましたか
・材料の向きを確認しましたか
・機械のランプを確認しましたか
・異常がないことをリーダーに伝えましたか
というように、行動ごとに確認できる形にします。
このようなチェックリストは、外国人スタッフだけでなく、日本人スタッフにも有効です。
「わかりやすい資料」と「確認できる仕組み」をセットにすることで、教育の質を安定させることができます。
Codexで作る外国人スタッフ向けの管理ツール
Codexを活用すると、外国人スタッフへの説明や教育を支える小さな管理ツールを作ることができます。
たとえば、次のようなものです。
・やさしい日本語の作業手順書テンプレート
・写真付きマニュアルのひな形
・教育チェックリスト
・理解度確認表
・面談記録表
・在留期限管理表
・雇用契約更新の確認リスト
・社内ルール確認表
・多言語資料の管理一覧
・作業ごとの注意事項一覧
たとえば、教育チェックリストでは、
・スタッフ名
・作業名
・説明日
・説明担当者
・本人の理解度
・実施確認日
・再確認が必要な内容
・次回確認日
などを記録できます。
これにより、誰がどの作業を教えたのか、どこまで理解できているのかを確認しやすくなります。
また、在留期限管理表と組み合わせれば、在留資格の更新時期や雇用契約の更新時期も管理しやすくなります。
外国人雇用では、「説明」「教育」「書類管理」「期限管理」がつながっています。
Codexは、それらを見える化するための小さな仕組みづくりに活用できます。
「伝わったか」を確認する仕組みが大切
外国人スタッフに説明するときは、説明しただけで終わらせないことが大切です。
特に安全や品質に関わる内容は、本人が本当に理解しているかを確認する必要があります。
ただし、「わかりましたか」と聞くだけでは十分ではありません。
相手が遠慮して「はい」と答えてしまうこともあります。
本当は理解できていなくても、質問しにくい場合もあります。
そこで、次のような確認方法が役立ちます。
・本人に作業手順を説明してもらう
・実際に作業をやってもらう
・写真を見ながら正しい手順を選んでもらう
・チェックリストに沿って確認する
・わからない言葉を聞き出す
・定期的に面談する
・同じ説明を複数回行う
大切なのは、相手を試すことではありません。
安心して質問できる雰囲気を作りながら、理解のズレを早めに見つけることです。
Codexを使えば、理解度確認表や面談記録表を作り、教育の状況を管理しやすくすることができます。
日本人スタッフ側の理解も重要
外国人スタッフにも伝わる職場づくりでは、外国人スタッフ本人への教育だけでなく、日本人スタッフ側の理解も重要です。
外国人スタッフが職場になじめるかどうかは、日本人スタッフの関わり方にも大きく影響されます。
たとえば、
・簡単な日本語で話す
・一度に多くのことを言いすぎない
・あいまいな指示を避ける
・できていることを具体的に伝える
・ミスがあったときは、原因を一緒に確認する
・文化や習慣の違いを頭ごなしに否定しない
・わからないことを質問しやすい雰囲気を作る
こうした対応は、外国人スタッフとの信頼関係を作るうえで大切です。
また、日本人スタッフ向けに、外国人スタッフへの伝え方をまとめた簡単なガイドを作ることも有効です。
たとえば、
・短い文で話す
・具体的に伝える
・「これ」「あれ」だけで説明しない
・実物や写真を見せる
・理解できたか作業で確認する
・困っている様子があれば声をかける
といった内容です。
AIを使えば、このような社内向けガイドのたたき台も作ることができます。
外国人スタッフだけに努力を求めるのではなく、会社全体で伝わりやすい職場を作ることが大切です。
文化の違いを「問題」ではなく「前提」として考える
外国人スタッフと働く中では、文化や習慣の違いに戸惑うことがあります。
時間の感覚、報告の仕方、注意されたときの反応、休暇への考え方、宗教上の配慮、食事の制限、上下関係の捉え方など、日本人スタッフとは違う部分があるかもしれません。
しかし、それをすぐに「問題」と考えるのではなく、「違いがあることを前提に職場のルールを明確にする」と考えることが大切です。
たとえば、
・始業時間の何分前に来る必要があるのか
・休むときは誰に、いつまでに連絡するのか
・作業中にスマートフォンを使ってよい場面はあるのか
・報告が必要なトラブルは何か
・危険作業では何を必ず守るのか
・服装や身だしなみのルールは何か
こうしたことを、あいまいにせず、わかりやすく伝える必要があります。
ルールを明確にすることは、外国人スタッフを厳しく管理するためではありません。
本人が安心して働き、会社も安心して受け入れるための土台になります。
情報管理には十分注意する
外国人スタッフに関する情報には、重要な個人情報が多く含まれます。
在留カード、パスポート、在留資格、在留期限、住所、給与、雇用契約、家族情報、面談記録などは、慎重に管理する必要があります。
AIを活用する場合でも、これらの情報をそのまま入力することは避けるべきです。
AIを使ってマニュアルやチェックリスト、管理表を作る場合には、まずサンプルデータや仮の情報を使って仕組みを作ることが安全です。
たとえば、
・氏名は「スタッフA」「スタッフB」にする
・在留カード番号は入力しない
・住所や生年月日は使わない
・実際の雇用契約書をそのまま入力しない
・必要最小限の項目だけで検討する
といった対応が考えられます。
また、会社として、
・誰が情報を見られるのか
・どこに保存するのか
・どの情報をAIに入れてよいのか
・どの情報は入力禁止にするのか
・作成したツールを誰が確認するのか
を決めておくことも重要です。
AI活用は便利ですが、個人情報管理とセットで進める必要があります。
行政書士として、外国人雇用とAI活用を伴走します
私は行政書士として、外国人雇用や中小企業支援の視点を大切にしながら、Codexを活用した業務改善の伴走サポートに取り組んでいます。
外国人雇用では、在留資格や更新手続き、雇用関係書類の確認が重要です。
しかし、それだけでなく、実際の職場で外国人スタッフが安心して働ける仕組みを整えることも大切です。
たとえば、
・やさしい日本語の作業手順書を作る
・写真付きマニュアルを整備する
・教育チェックリストを作る
・理解度確認表を作る
・面談記録を整理する
・在留期限や更新時期を管理する
・社内ルールをわかりやすくまとめる
・日本人スタッフ向けの伝え方ガイドを作る
・AIを使う際の情報管理ルールを考える
こうした取り組みを、会社の実情に合わせて一緒に進めることができます。
Codexは便利な道具ですが、初心者が一人で使い始めると、何から始めればよいのか、どのように指示すればよいのか、作ったものが現場で使えるのか、情報管理に問題がないのかでつまずくことがあります。
私は、AIを紹介して終わりではなく、現場の困りごとを整理し、実際に使える資料や管理ツールに落とし込み、運用しながら改善していくところまで伴走してサポートしていきます。
外国人雇用を「採用して終わり」にしないために、手続き面と職場づくりの両面から支援していきたいと考えています。
まとめ
外国人スタッフを雇用する中小企業では、在留資格や雇用契約などの手続きだけでなく、職場でのコミュニケーションや教育の仕組みづくりが重要です。
「日本語で説明した」ことと、「相手に正しく伝わった」ことは同じではありません。
やさしい日本語、写真付きマニュアル、チェックリスト、多言語資料、理解度確認表などを活用することで、外国人スタッフにも伝わりやすい職場を作ることができます。
ChatGPTは、説明文をやさしい日本語にしたり、社内ルールを整理したり、マニュアルのたたき台を作ったりする場面で役立ちます。
Codexは、教育チェックリスト、面談記録表、在留期限管理表、マニュアル管理表など、実際に使える小さな仕組みづくりに活用できます。
外国人スタッフにとってわかりやすい職場は、日本人スタッフや新人にとっても働きやすい職場です。
外国人雇用をきっかけに、作業手順、教育、書類管理、社内ルールを見直すことは、会社全体の業務改善にもつながります。
次回は、採用・教育・定着を支えるAI活用について、人材不足を補う仕組みづくりの視点から考えていきます。

