AI導入で失敗しないために:中小企業が守るべき情報管理のルール

― Codexで始める業務改善10のヒント【第9回】

人手不足の時代に、中小企業がAIを活用することは、業務改善の大きな助けになります。

ChatGPTを使えば、文章作成、マニュアル作成、やさしい日本語への言い換え、社内ルールの整理などがしやすくなります。
Codexを使えば、Excel作業の効率化、ファイル整理、チェックリスト作成、入力フォーム、台帳管理など、小さな業務ツールづくりに活用できます。

しかし、AIを使うときに必ず考えなければならないことがあります。

それが、情報管理です。

AIは便利な道具ですが、会社の情報や個人情報を何でもそのまま入力してよいわけではありません。
便利さだけを優先して使ってしまうと、情報漏えい、誤った判断、社内ルール違反、取引先との信頼低下につながるおそれがあります。

第9回では、中小企業がAIを導入する際に守るべき情報管理の基本ルールについて考えていきます。

AI活用で一番怖いのは「よくわからないまま使うこと」

AI活用で一番危険なのは、AIそのものではありません。

一番怖いのは、仕組みや注意点をよく理解しないまま、会社の大事な情報を入力してしまうことです。

たとえば、次のような使い方には注意が必要です。

・顧客名が入った一覧表をそのままAIに入力する
・社員名や住所が入ったExcelファイルをアップロードする
・外国人スタッフの在留カード情報をそのまま入力する
・取引先との契約書を丸ごとAIに読ませる
・図面や技術資料をそのまま使う
・社内の不具合情報やクレーム内容を実名で入力する
・給与情報や評価情報をAIに入れる

本人に悪気がなくても、「便利そうだから」「早く処理したいから」という理由で入力してしまうことがあります。

しかし、会社の情報には、外部に出してはいけないものが多く含まれています。

AIを使う前に、まず「この情報をAIに入れてよいのか」を考える習慣が必要です。

AIに入力してはいけない情報を決める

中小企業がAIを安全に使うためには、まず「入力してはいけない情報」を決めることが大切です。

細かいルールを作る前に、まずは大きな分類で考えるとわかりやすくなります。

たとえば、次のような情報は慎重に扱う必要があります。

・個人情報
・顧客情報
・取引先情報
・契約内容
・給与や評価に関する情報
・在留カードやパスポートに関する情報
・社内の機密情報
・製品情報や図面
・不具合やクレームの詳細
・未公開の経営情報
・会社独自のノウハウ

これらの情報をAIに入力する場合には、原則としてそのまま使わないことが重要です。

特に、外国人スタッフに関する情報には、氏名、住所、生年月日、国籍、在留資格、在留期限、在留カード番号、パスポート情報、雇用契約、給与など、重要な個人情報が含まれます。

これらをそのままAIに入力することは避けるべきです。

AIを使う場合には、まずサンプルデータや仮の情報に置き換えて検討することが安全です。

サンプルデータで試す

AIやCodexを使って業務改善を始めるときは、いきなり実際のデータを使わないことが大切です。

まずはサンプルデータで試します。

たとえば、外国人スタッフの在留期限管理表を作りたい場合でも、最初から本物の氏名や在留カード番号を使う必要はありません。

次のような仮のデータで十分です。

・スタッフA
・スタッフB
・スタッフC
・在留期限 2026年12月31日
・在留期限 2027年3月15日
・在留資格 技術・人文知識・国際業務
・在留資格 特定技能

このような仮データを使って、まず管理表の形や動作を確認します。

請求書管理でも同じです。

実際の取引先名や金額を入れなくても、

・株式会社サンプル
・A社
・B社
・100,000円
・250,000円

のような仮データで、ツールの動作を確認できます。

Codexで小さなツールを作る場合も、まずはサンプルデータで作成し、正しく動くことを確認してから、社内の安全な環境で実データに適用する流れが望ましいです。

匿名化・マスキングを行う

実際の業務内容に近いデータを使う必要がある場合でも、個人や会社が特定できる情報はできるだけ伏せるべきです。

これを匿名化、またはマスキングといいます。

たとえば、次のような置き換えが考えられます。

・山田太郎 → スタッフA
・株式会社〇〇製作所 → 取引先A
・在留カード番号 → 入力しない
・住所 → 愛知県内、名古屋市内など大まかな表現にする
・電話番号 → 000-0000-0000
・メールアドレス → sample@example.com
・具体的な製品名 → 製品A
・具体的な金額 → 仮の金額にする

AIに相談するときは、必ずしも実名や本物の番号が必要とは限りません。

たとえば、

「外国人スタッフの在留期限を管理するExcel表を作りたい」

という相談であれば、実際の氏名や在留カード番号を入力しなくても、十分に検討できます。

「請求書ファイルを日付と取引先名で整理したい」

という相談でも、仮のファイル名やサンプルのルールで考えることができます。

AI活用では、必要以上に本物の情報を使わないことが重要です。

社内でAI利用ルールを決める

中小企業でAIを使う場合、個人の判断に任せすぎるのは危険です。

ある人は慎重に使っていても、別の人が何でも入力してしまえば、会社全体のリスクになります。

そのため、社内でAI利用ルールを決めることが大切です。

最初から難しい規程を作る必要はありません。
まずは、次のような簡単なルールから始めることができます。

・個人情報はそのままAIに入力しない
・顧客名や取引先名は伏せる
・契約書や図面は丸ごと入力しない
・在留カードやパスポート情報は入力しない
・AIが作った文章は必ず人が確認する
・AIが作ったツールはテストしてから使う
・会社の許可なく外部サービスに業務ファイルをアップロードしない
・困ったときは担当者に確認する

このような基本ルールがあるだけでも、危険な使い方を減らすことができます。

AI活用は「禁止する」だけでは進みません。
しかし、何でも自由に使わせるのも危険です。

大切なのは、「使ってよいこと」と「使ってはいけないこと」をわかりやすく分けることです。

AIが作ったものをそのまま使わない

AIはとても便利ですが、出てきた答えが常に正しいとは限りません。

文章であっても、表であっても、コードであっても、必ず人が確認する必要があります。

たとえば、ChatGPTが作ったマニュアルには、現場の実態と合わない内容が含まれるかもしれません。
やさしい日本語に直したつもりでも、実際には意味が変わってしまっている可能性もあります。
法律や制度に関する説明では、古い情報や不正確な表現が含まれることもあります。

Codexが作ったツールも同じです。

見た目は動いているように見えても、計算結果が間違っているかもしれません。
一部の条件でエラーが出るかもしれません。
ファイルの保存先を間違えるかもしれません。
想定外の入力に弱いかもしれません。

そのため、AIが作ったものは、必ず確認する必要があります。

特に業務で使う前には、

・計算結果が正しいか
・必要な項目が抜けていないか
・想定どおりに保存されるか
・個人情報が不要に表示されていないか
・権限のない人が見られないか
・エラーが出たときにどうなるか
・古いデータを上書きしないか

を確認することが大切です。

AIは「答えを出してくれるもの」ではなく、「たたき台を作るもの」と考えるほうが安全です。

Codexで作ったツールは必ずテストする

Codexを使うと、Excel処理、ファイル整理、入力フォーム、台帳管理などの小さな業務ツールを作ることができます。

しかし、作ったツールをいきなり本番業務で使うのは危険です。

まずはテストが必要です。

たとえば、請求書ファイル名を変更するツールを作った場合、いきなり実際の請求書フォルダで実行してはいけません。

まず、コピーしたテスト用フォルダを用意します。
その中にサンプルファイルを入れます。
想定どおりにファイル名が変わるか確認します。
間違った名前にならないか確認します。
元に戻せるか確認します。

Excel集計ツールでも同じです。

まずはサンプルデータで実行します。
計算結果を手作業でも確認します。
空欄や入力ミスがあった場合にどうなるか確認します。
異常なデータが入ったときに止まるか、警告が出るか確認します。

特に注意したいのは、次のような処理です。

・ファイル名を一括変更する
・ファイルを移動する
・データを削除する
・上書き保存する
・複数のExcelファイルをまとめる
・金額を計算する
・期限を判定する

これらは便利ですが、間違えると影響が大きくなります。

Codexで作ったツールは、必ずテストしてから使う。
このルールは徹底する必要があります。

保存場所とアクセス権限を整理する

AIで作った資料やツールを社内で使う場合、保存場所とアクセス権限も重要です。

せっかく便利な管理表を作っても、誰でも見られる場所に保存してしまうと、個人情報や機密情報の漏えいにつながる可能性があります。

たとえば、外国人スタッフの在留期限管理表や雇用契約の管理表には、個人情報が含まれます。
面談記録には、本人の悩みや生活面の相談が含まれることもあります。

こうした情報は、必要な人だけが見られる状態にする必要があります。

確認したいのは、次のような点です。

・ファイルはどこに保存するのか
・誰が見られるのか
・誰が編集できるのか
・退職者や異動者のアクセス権限は削除されているか
・外部共有になっていないか
・バックアップはあるか
・誤って削除した場合に復元できるか

AI活用では、ツールの便利さだけでなく、運用後の管理も考える必要があります。

特にクラウドストレージを使っている場合は、共有設定を確認することが大切です。

外国人雇用に関する情報は特に慎重に扱う

外国人スタッフを雇用している会社では、管理する情報が多くなります。

たとえば、

・氏名
・住所
・生年月日
・国籍
・在留資格
・在留期限
・在留カード番号
・パスポート情報
・雇用契約
・労働条件
・給与
・勤務状況
・面談記録
・更新手続きの状況

これらは、会社にとって重要な管理情報であると同時に、本人にとっても非常に大切な個人情報です。

AIを使って在留期限管理表や書類チェックリストを作る場合でも、実際の個人情報をそのままAIに入力する必要はありません。

まずは仮のデータで仕組みを作り、社内の安全な環境で実際の情報を管理することが大切です。

また、在留資格や雇用に関する判断は、慎重に行う必要があります。

AIに相談することはできますが、最終的な判断は、制度を確認し、必要に応じて専門家に相談したうえで行うべきです。

外国人雇用では、情報管理、期限管理、法令遵守がすべてつながっています。

AIはそれを支える道具として使うべきであり、判断を丸投げするものではありません。

AI利用ルールは「現場で使える言葉」にする

社内ルールを作るときに大切なのは、現場の人が理解できる言葉にすることです。

難しい規程文のように書いても、実際に使う人が理解できなければ意味がありません。

たとえば、

「機密情報の外部送信を禁止する」

という表現だけでは、現場の人には具体的に何が禁止なのかわかりにくい場合があります。

それよりも、

・顧客名が入ったExcelをAIに入れない
・社員名簿をAIにアップロードしない
・在留カードの画像をAIに入れない
・図面や製品情報をそのままAIに入れない
・契約書を丸ごと貼り付けない
・使ってよいか迷ったら責任者に確認する

のように、具体的に書くほうが伝わりやすくなります。

AI利用ルールも、やさしい日本語で書くことが大切です。

外国人スタッフやITに詳しくない社員にも伝わるように、短く、具体的に、行動ベースで示すとよいでしょう。

ここでもChatGPTは役立ちます。
難しい社内ルールの文章を、現場向けにわかりやすく言い換えることができます。

Codexを使えば、AI利用チェックリストや、入力してよい情報・いけない情報を確認する簡単な表を作ることもできます。

小さなルールから始める

AIの情報管理というと、難しく感じるかもしれません。

しかし、最初から完璧な規程を作る必要はありません。

まずは、小さなルールから始めることができます。

たとえば、

  1. 個人情報は入れない
  2. 顧客名・取引先名は伏せる
  3. 契約書・図面・在留カードはそのまま入れない
  4. AIが作ったものは必ず人が確認する
  5. Codexで作ったツールはサンプルデータでテストする
  6. 迷ったら責任者に確認する

この6つだけでも、かなり安全性は高まります。

大切なのは、ルールを作って終わりにしないことです。

実際にAIを使う人に説明する。
わからない点を聞けるようにする。
事例が増えたらルールを見直す。
失敗しそうな使い方を共有する。

このように、少しずつ社内に定着させていくことが重要です。

行政書士として、情報管理も含めて伴走します

私は行政書士として、外国人雇用や中小企業支援の視点を大切にしながら、Codexを活用した業務改善の伴走サポートに取り組んでいます。

AI活用では、業務が便利になる一方で、個人情報や機密情報の取り扱いに注意が必要です。

特に外国人スタッフを雇用している会社では、在留カード、パスポート、在留期限、雇用契約、面談記録など、慎重に扱うべき情報が多くあります。

そのため、単に「AIで便利なツールを作る」だけでなく、

・どの情報を使ってよいか
・どの情報はAIに入力しないか
・サンプルデータでどう試すか
・作成したツールをどうテストするか
・誰が確認するか
・どこに保存するか
・誰がアクセスできるか
・社内ルールをどう作るか

といった点も一緒に考える必要があります。

Codexは、業務改善の大きな助けになります。
しかし、初心者が一人で使い始めると、便利さに目が向きすぎて、情報管理やテストの部分でつまずくことがあります。

私は、AIの活用方法だけでなく、実際の業務で安全に使うためのルールづくりや運用面も含めて、伴走してサポートしていきたいと考えています。

まとめ

AIは、中小企業の人手不足や業務改善を支える便利な道具です。

ChatGPTを使えば、文章作成、マニュアル作成、やさしい日本語への言い換え、社内ルールの整理などがしやすくなります。
Codexを使えば、Excel作業、ファイル整理、入力フォーム、チェックリスト、台帳管理などの小さな業務ツールを作ることができます。

しかし、AIを使うときには、情報管理を必ずセットで考える必要があります。

個人情報、顧客情報、取引先情報、契約書、図面、在留カード、パスポート、給与情報、面談記録などを、そのままAIに入力することは避けるべきです。

まずはサンプルデータで試す。
必要に応じて匿名化する。
社内でAI利用ルールを決める。
AIが作ったものは人が確認する。
Codexで作ったツールはテストしてから使う。
保存場所とアクセス権限を整理する。

こうした基本を守ることで、AIを安全に活用しやすくなります。

AI活用で大切なのは、「便利だから何でも使う」ことではありません。
安全に使える範囲を決め、その中で小さな業務改善を積み重ねていくことです。

次回はいよいよ最終回です。
中小企業の未来は“自社専用ツール”で変わる、というテーマで、Codex活用の始め方をまとめていきます。

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Katsについて

見よう見まねでまずはホームページを立ち上げてみました。これから少しずつレベルアップしていくと思うので、長い目で見てやってください。

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