第3回 「外国人だけ特別扱い」という不満をどう考えるか
「外国人社員には丁寧に説明するのに、自分たちには説明がない」
「生活の相談まで会社が対応するのは、特別扱いではないか」
「支援が増える分、こちらの仕事も増えている」
外国人社員の受入れを進める中で、日本人社員からこうした声が出ることがあります。
会社としては、仕事や日本での生活に慣れてもらうために必要な支援をしているつもりでも、その目的が伝わっていなければ、不公平に見えることがあります。
こうした声を「理解が足りない」と片づけると、社員は本音を話しにくくなります。まずは何に不公平さを感じているのかを確かめ、支援の内容と職場の負担を見直すことが大切です。
今回は、外国人社員への支援と、日本人社員が感じる公平感について考えます。
「特別扱い」という言葉の奥にあるもの
「外国人だけ特別扱いだ」という発言には、さまざまな気持ちが含まれている可能性があります。
自分が入社したときは、十分に教えてもらえなかった。
忙しいのに、指導や相談対応が追加されている。
外国人社員への支援はあるが、自分の困りごとは聞いてもらえない。
このような不満が、外国人社員への支援をきっかけに表れることもあります。
例えば、指導担当者が「説明に時間をかけすぎではないか」と話した場合、本当に困っているのは、その間も通常の仕事量が変わらないことかもしれません。
会社が確認したいのは、支援への賛否だけではありません。
「どの対応が気になったのか」
「そのことで、どんな負担が生じているのか」
「自分たちへの対応と、どこが違うと感じるのか」
具体的な場面を聞くことで、解決すべき課題が見えてきます。
公平さを考えるときは、共通の目的を確かめる
同じ説明を一度ずつすれば、全員が同じように理解できるとは限りません。
日本語に不慣れな社員には、短い言葉や写真を使った説明が必要になることがあります。経験のない作業を担当する社員には、国籍にかかわらず、実演や練習が必要です。
大切なのは、「安全に作業できる」「仕事の内容を理解できる」という共通の目的に向けて、必要な方法を選ぶことです。
例えば、安全教育の目的は、全員に同じ時間だけ説明することではなく、全員が危険を理解し、適切に行動できるようにすることです。
支援の理由を「外国人だから」とだけ説明するよりも、「この作業の注意点を確実に理解してもらうため」と具体的に伝えるほうが、対応の目的を共有しやすくなります。
理解を支える工夫と、作業基準は分けて考える
説明の方法を変えることと、守るべき基準を変えることは、分けて考える必要があります。
例えば、作業手順を写真で示したり、理解を確認する時間を増やしたりしても、安全や品質の基準まで曖昧にしてよいわけではありません。
「説明は丁寧にするが、確認すべき品質は共通」
「習得に向けた支援は調整するが、一人で任せる際の確認項目は共通」
このように、支援する部分と共通にする部分を整理しましょう。
基準が見えないまま、その場の判断で対応が変わると、教える側にも教わる側にも戸惑いが生まれます。作業を任せる条件や、異常時の報告方法などを共有しておくことが重要です。
支援をするなら、それを担う社員への対応も考える
外国人社員に必要な支援を説明するだけでは、日本人社員の負担は減りません。
「必要な支援なので協力してください」と言われても、指導時間が増え、担当業務が変わらなければ、不満が残るのは自然なことです。
会社は、支援を決める際に、その仕事を誰が担うかまで考える必要があります。
- 指導に時間が必要なら、担当者の通常業務を調整する
- 生活上の相談は、内容に応じて社内の窓口につなぐ
- 通訳や翻訳が必要な場面は、現場任せにせず対応方法を決める
- 一人への集中を避け、代わりに対応できる人を用意する
支援の目的を伝えることと、支援する側の負担を整えること。この両方があってこそ、協力を得やすくなります。
外国人社員への工夫を、全員が使えるものにする
外国人社員向けに始めた工夫が、ほかの社員にも役立つことがあります。
写真付きの作業手順書は、日本人の新人や応援に入る社員にも使えます。分かりやすい社内案内は、入社したばかりの人の不安を減らします。相談窓口が明確であれば、誰もが困ったときに連絡しやすくなります。
こうした取組は、利用できる人を必要以上に限定せず、職場全体で使える形にしていきましょう。
例えば、「外国人社員向けの相談窓口」を整える際に、日本人社員が相談できる先も併せて確認する。外国人社員との面談を始める際に、指導担当者の困りごとを聞く機会も設ける。
外国人社員の受入れをきっかけに、これまで十分でなかった社内の仕組みを整えるという考え方です。
支援の理由は共有しても、個人の事情は広げすぎない
社員の理解を得ようとして、支援を受ける本人の事情を詳しく説明したくなることもあるでしょう。
しかし、家庭の事情、健康状態、経済的な困りごとなどを、職場全体に広く伝える必要があるとは限りません。
全員に共有したいのは、会社としての支援の目的、担当する役割、業務への影響です。個人の詳しい事情は、対応に必要な範囲で扱うようにします。
例えば、現場への説明は「当面、手続きに関する相談は総務が担当します。作業指導はこれまでどおり現場でお願いします」といった形でもできます。
公平感を得るための説明と、本人のプライバシーへの配慮を両立させることが大切です。
不満は聞く。ただし、国籍による決めつけはそのままにしない
社員が不公平さを感じている場合、その声を聞くことは必要です。一方で、特定の国籍を一括りにした発言や、本人を傷つける言動は、その場で対応する必要があります。
例えば、「この相談対応が自分に集中していて困る」という話なら、役割分担を見直す課題として扱えます。
しかし、「あの国の人はみんなそうだ」という決めつけが出た場合は、具体的な出来事と国籍を分けて考えるよう促します。
「困っている場面を確認しましょう。ただ、国籍で一括りにする言い方はやめましょう」
不満を話せる職場にすることと、互いを尊重する職場にすることは、どちらも欠かせません。
「何が違うか」から「なぜ必要か、誰が担うか」へ
外国人社員への支援を進めるとき、日本人社員の理解を得るには、支援の必要性を説明するだけでなく、実際の負担にも目を向ける必要があります。
何のための支援なのか。
仕事の基準はどうなっているのか。
誰が対応し、その時間をどう確保するのか。
ほかの社員も使える仕組みにできないか。
これらを具体的にすることで、職場で話し合う土台ができます。
「特別扱いではないか」という声が出たら、まずは何に困っているのかを聞いてみましょう。その声は、外国人社員への支援と、日本人社員の働きやすさを一緒に見直すきっかけになります。
次回は、「班長一人に抱え込ませない相談・支援の仕組み」をテーマに、現場、総務、経営者の役割と、困りごとのつなぎ方について考えます。
行政書士 Y’sインターナショナルでは、製造現場での経験を生かし、在留資格の手続きに加えて、外国人社員の受入れ・定着に向けた体制づくりについてご相談を承っています。支援の進め方や、社内への説明、現場の役割分担にお悩みの企業様も、お気軽にお問い合わせください。

