第2回 指導担当者に負担が集中する職場をどう変えるか
「新人の指導は、いつもの○○さんにお願いしよう」
製造現場では、仕事に詳しく、面倒見のよい社員に教育を任せることがあります。安心して任せられる人がいるのは、会社にとって大きな強みです。
しかし、その人に頼り続けるうちに、作業の説明、進み具合の確認、ミスへの対応、生活上の相談まで、一人に集まっていないでしょうか。
指導担当者が「大丈夫です」と答えていても、仕事に余裕があるとは限りません。頼まれた以上は何とかしようと、自分の作業を後回しにしているかもしれません。
今回は、外国人社員を指導する日本人社員の負担を、職場全体で支える方法を考えます。
「教える仕事」が見えなくなっていないか
指導には、説明している時間以外にも手間がかかります。
教える内容を整理する。
分かりやすい言葉や見本を用意する。
作業を見守り、必要な場面で声をかける。
どこまで理解できたか確認する。
これらは、教育に必要な仕事です。しかし、生産数や作業実績だけを見ていると、その負担が見えにくくなります。
例えば、担当者が新人に説明するために自分の作業を止めていても、通常と同じ生産量を求められる。教え終わった後に、遅れた分を取り戻そうとする。
この状態では、丁寧に教えるほど担当者が苦しくなってしまいます。
まずは「指導も業務の一つ」として、必要な時間と担当範囲を仕事の計画に入れることが大切です。
最初に、何が集中しているかを確かめる
負担を減らすには、「忙しそうだから誰か手伝って」という対応の前に、担当者が何を抱えているかを整理しましょう。
確認したいのは、例えば次のようなことです。
- 作業説明と理解度の確認に、どのくらい時間がかかっているか
- 同じ質問や説明が、繰り返し発生していないか
- 指導のために、どの通常業務が遅れているか
- 作業以外の相談を、どの程度受けているか
- 担当者が休むと、何が止まってしまうか
細かな記録を毎日求めると、それ自体が負担になります。まずは短い面談で、一日の流れや困っている場面を聞くところから始めてもよいでしょう。
「教えるのが大変」という声を、時間、作業、相談内容に分けると、会社が調整すべき点が見えてきます。
役割は分けても、教える基準はそろえる
一人への集中を避けるため、複数の社員で指導を分担する方法があります。ただし、単に「みんなで教えよう」とするだけでは、別の混乱が起きかねません。
「昨日はこう教わったのに、今日は違うと言われた」
教える人によって説明や合格の基準が変わると、外国人社員は何を守ればよいか分からなくなります。
分担するときは、次の二つをセットで整えましょう。
一つは、担当する役割を明確にすることです。
例えば、作業の基本は主担当、主担当が不在のときは副担当、教育の進み具合と仕事量の調整は班長が確認します。雇用条件や生活上の相談は、内容に応じて社内の窓口につなぎます。
もう一つは、作業手順と確認基準を共有することです。
作業の順番、注意する箇所、一人で任せられる状態をそろえておけば、担当者が替わっても教育を引き継ぎやすくなります。
小さな会社では、一人が複数の役割を兼ねることもあるでしょう。その場合も、誰が判断し、困ったときに誰へ相談するかを決めておくことが重要です。
教育時間は「空いたら」ではなく、予定に入れる
「時間が空いたら教えておいて」
この指示では、生産が忙しくなるほど教育が後回しになります。結果として、十分に理解できないまま作業を始めたり、担当者が仕事の合間に何度も説明したりすることになります。
教育が必要な期間は、あらかじめ時間を確保しましょう。
例えば、始業後にその日の作業と注意点を確認する時間を設ける。新しい工程を教える日は、担当者の受持ち作業を減らす。終業前には短く振り返り、翌日に引き継ぐ内容を確認する。
必要な時間は、作業の難しさや本人の経験によって異なります。最初の計画を固定せず、理解の進み具合に合わせて見直すことも大切です。
指導時間を確保する際は、その間の通常業務を誰が担うかまで考えます。予定表に教育時間を書くだけでは、担当者の負担は減りません。
繰り返す説明を、職場で使える教材にする
同じ説明を何度もしている場合は、教材を整えることで負担を減らせる可能性があります。
- 部品の向きを写真で示す
- 正常品と不良品の違いを見本で示す
- 作業の順番を短い文と番号で示す
- 異常時に止める場所と連絡先を分かりやすく示す
最初から立派なマニュアルを作る必要はありません。担当者が繰り返し説明している一つの作業から始めると、取り組みやすくなります。
ただし、教材づくりまで指導担当者一人に任せると、負担がさらに増えます。写真の撮影や文書の整理は別の社員が手伝い、担当者には内容の確認をお願いするなど、作成も分担しましょう。
教材は、外国人社員だけでなく、日本人の新人や応援に入る社員にも使える形を目指すと、職場全体の財産になります。
教えた仕事も、評価の対象にする
指導を任せているのに、評価では本人の生産実績しか見ていない。この状態では、担当者が不公平さを感じることもあります。
教育への貢献も、上司が把握しておきたい仕事です。
手順を分かりやすく整理したこと。
理解度を確認しながら教えたこと。
困りごとを早めに共有したこと。
他の担当者に引き継げる状態を整えたこと。
こうした取組に目を向けましょう。
新人が一人で作業できるまでの速さだけで評価すると、急いで独り立ちさせようとするおそれがあります。作業の難しさや本人の経験も踏まえ、指導の過程を確認することが大切です。
「相談してよい」と言うだけで終わらせない
指導担当者に「困ったら言ってください」と伝えても、本人から相談が出るとは限りません。
「忙しい上司に言いにくい」
「自分の教え方が悪いと思われそう」
「もう少し頑張れば何とかなる」
そう考えて抱え込むこともあります。
上司から定期的に、具体的な場面を聞いてみましょう。
「今週、指導のために後回しになった仕事はありますか」
「一人では対応しにくかった相談はありましたか」
「来週、新しく教える作業にどんな準備が必要ですか」
相談を受けたら、担当業務を調整する、補助する人を決めるなど、対応につなげます。担当者の頑張りをねぎらうことと、仕事の負担を減らすことは、どちらも必要です。
一人の頑張りを、職場全体の仕組みへ
信頼できる指導担当者は、外国人社員の受入れを支える大切な存在です。その人が無理なく教え続けられるよう、会社として条件を整えたいところです。
まずは、担当者が抱えている仕事を確認する。
役割と教える基準をそろえる。
教育時間を確保し、通常業務を調整する。
教材づくりや相談対応を分担する。
最初の一歩として、指導担当者に「今、何に一番時間がかかっていますか」と聞いてみてはいかがでしょうか。
その答えを手がかりに、一つでも負担を減らすことが、受入れ体制の改善につながります。
次回は、「『外国人だけ特別扱い』という不満をどう考えるか」をテーマに、支援の目的の伝え方と、職場での公平感について考えます。
行政書士 Y’sインターナショナルでは、製造現場での経験を生かし、在留資格の手続きに加えて、外国人社員の受入れ・定着に向けた体制づくりについてご相談を承っています。指導担当者への負担や、社内の役割分担にお悩みの企業様も、お気軽にお問い合わせください。

