外国人社員を現場の戦力に育てる【第1回】
外国人社員がなかなか一人前になれない本当の理由
―本人の能力ではなく、教え方と職場の仕組みを見直す―
外国人社員を採用したものの、現場から次のような声が聞こえてくることがあります。
「何度教えても同じ間違いをする」
「指示を待つだけで、自分から動かない」
「日本語がなかなか上達しない」
「いつまでたっても一人で仕事を任せられない」
このような状況が続くと、「本人の能力や意欲に問題がある」と考えてしまいがちです。
しかし、本当に本人だけの問題でしょうか。
外国人社員が育たない原因を詳しく見ると、教え方や作業手順、職場の受入れ体制に問題が隠れていることがあります。
新特集「外国人社員を現場の戦力に育てる」では、製造現場における教育、理解度確認、評価、改善活動について考えます。
「日本人なら分かる」が通用しない
日本の製造現場では、先輩の作業を見ながら覚える、分からないことは自分から質問するといった教育が行われることがあります。
また、次のような曖昧な指示も少なくありません。
- きちんと確認して
- いつものようにやって
- 適当に並べておいて
- その辺に置いて
- もう少し早くして
日本人社員は、周囲の状況や過去の経験から意味を推測できるかもしれません。
しかし、日本語や日本の職場文化を学んでいる途中の外国人社員には、何を、どこまで、どのように行えばよいのか分からない場合があります。
分からなくても「分かりません」と言えず、とりあえず「はい」と答えてしまうこともあります。
作業標準が指導者によって違っていないか
同じ作業でも、指導する人によって説明が違うことがあります。
ある先輩は「最初にAを確認する」と教え、別の先輩は「Bを先にやる」と教える。さらに、手順書に書かれている内容と、現場で実際に行われている作業が違うこともあります。
これでは、外国人社員が混乱するのは当然です。
本人の理解力を疑う前に、次の点を確認しましょう。
□ 作業手順は統一されているか
□ 指導者によって教え方が違っていないか
□ 手順書と実際の作業が一致しているか
□ 合格となる品質基準が明確になっているか
□ 異常時の対応が決められているか
外国人社員への教育をきっかけに作業を見直すと、これまでベテラン社員の経験や勘に頼っていた部分が見えてきます。
一度の説明で覚えることを求めていないか
口頭で説明した後に「分かりましたか」と聞くと、多くの人は「はい」と答えます。
しかし、「はい」は、必ずしも作業を正しく理解したという意味ではありません。
説明を聞いた直後には理解できていても、実際の作業では手順を再現できないことがあります。また、質問すると指導者に迷惑をかけると考え、理解できていなくても「分かりました」と答える人もいます。
指導では、次の流れが有効です。
- 指導者が実際に作業を見せる
- 外国人社員に作業をしてもらう
- 本人に手順や注意点を説明してもらう
- 間違いがあれば、その場で修正する
- 数日後にもう一度確認する
「説明したか」ではなく、「本人が一人で正しくできるか」を確認することが重要です。
日本語力と仕事の能力を分けて考える
外国人社員の日本語が十分でないと、仕事の能力まで低く評価してしまうことがあります。
しかし、日本語でうまく説明できないことと、作業能力が低いことは同じではありません。
専門的な知識や高い技能を持っていても、それを日本語で表現できない場合があります。反対に、日本語で会話ができても、作業手順や安全ルールを正しく理解しているとは限りません。
評価するときは、少なくとも次の項目を分けて考えましょう。
- 日本語による理解・説明
- 作業手順の正確さ
- 品質基準の理解
- 作業速度
- 安全行動
- 報告・連絡・相談
- 改善への取り組み
日本語力だけで判断せず、実際の仕事を見て評価することが大切です。
質問しやすい職場になっているか
外国人社員が質問しない理由を、「意欲がないから」と決めつけてはいけません。
実際には、次のような不安を抱えている場合があります。
- 何度も聞くと怒られる
- 忙しそうなので声をかけにくい
- どの人に聞けばよいか分からない
- 質問するための日本語が分からない
- 間違いを報告すると評価が下がると思っている
「分からないときは聞いてください」と伝えるだけでなく、質問する相手やタイミングを具体的に決めておきましょう。
また、異常や失敗を早く報告した社員を責めるのではなく、早期報告を評価する職場づくりも必要です。
まず会社側の仕組みを点検する
外国人社員がなかなか育たないと感じたら、本人への注意や再教育を行う前に、会社側の仕組みを確認してみましょう。
□ 指示は短く具体的になっているか
□ 写真や現物を使って説明しているか
□ 作業手順と品質基準が明確か
□ 本人に実演してもらっているか
□ 定期的に理解度を確認しているか
□ 質問や異常報告をしやすいか
□ 日本語力と作業能力を分けて評価しているか
この中に改善できる点があれば、外国人社員本人だけの問題ではない可能性があります。
まとめ
外国人社員が一人前になれない原因を、本人の能力や意欲、日本語力だけに求めても、問題は解決しません。
教える人によって手順が違う、指示が曖昧、理解度を確認していない、質問しにくいといった職場側の問題が、成長を妨げていることがあります。
外国人社員への教育を見直すことは、作業の標準化や品質の安定、新人教育の改善にもつながります。これは外国人社員だけでなく、日本人社員にとっても働きやすい職場をつくる取り組みです。
次回は、「見て覚えて」という教育が外国人社員に伝わりにくい理由と、写真、動画、現物を使った作業教育の進め方を解説します。
※外国人社員の在留資格によっては、従事できる仕事内容に制限があります。教育や配置を行う際は、実際の業務が在留資格の範囲内であることも確認してください。

