早期離職のサインを見逃さない
外国人社員との面談とトラブル対応
外国人社員が入社して1〜2か月ほど経つと、仕事にも少しずつ慣れてきます。
最初の緊張がほぐれ、職場での人間関係も見えてくる時期です。
一方で、この頃から「思っていた仕事と違う」「職場になじめない」「生活が大変」といった不満や悩みが表面化することもあります。
企業側から見ると、毎日出勤して普通に仕事をしているため、問題がないように見えるかもしれません。
しかし、本人の中では少しずつ不満が積み重なり、ある日突然、「辞めたいです」
と相談されることがあります。
実際には、突然辞めたのではなく、その前から小さなサインが出ていた可能性があります。
第4回では、外国人社員の早期離職につながるサインと、面談やトラブル対応のポイントについて解説します。
1.「いつもと違う」に気づく
早期離職のサインは、大きなトラブルとして現れるとは限りません。
最初は、ちょっとした行動の変化として現れることがあります。
たとえば、
- 遅刻が増えた
- 欠勤が増えた
- 表情が暗くなった
- あいさつをしなくなった
- 休憩時間に一人でいることが増えた
- 質問しなくなった
- ミスが増えた
- 以前より会話が少なくなった
- 残業を嫌がるようになった
- 急に仕事への意欲が下がった
こうした変化があったからといって、すぐに退職を考えているとは限りません。
ただし、複数の変化が重なっている場合や、それまでと明らかに様子が違う場合は、声をかけるきっかけになります。
重要なのは、
「問題を起こしたから注意する」のではなく、
「何か困っていることがないか確認する」という姿勢です。
2.遅刻や欠勤だけを叱らない
たとえば、外国人社員の遅刻が増えた場合、
「遅刻しないでください」と注意するだけでは、問題が解決しないことがあります。
遅刻の背景には、
- 通勤手段に問題がある
- 自転車が壊れた
- 夜勤に慣れていない
- 寮で眠れない
- 体調が悪い
- 家族のことで悩んでいる
など、別の原因があるかもしれません。
もちろん、会社のルールを守ることは必要です。
しかし、ルール違反だけを見るのではなく、「なぜそうなったのか」を確認することが大切です。
たとえば、
「最近、遅刻が続いています。何か困っていることがありますか」
と聞けば、本人も事情を話しやすくなります。
原因が分かれば、会社として対応できることも見えてきます。
3.外国人社員が本音を言わないこともある
面談で、「仕事は大丈夫ですか」と聞いても、
「大丈夫です」と答える人は少なくありません。
本当は困っていても、
「会社に迷惑をかけたくない」
「不満を言うと評価が下がるかもしれない」
「上司に逆らってはいけない」
「日本語でうまく説明できない」
と考えて、本音を言えないことがあります。
そのため、「大丈夫ですか」という質問だけでは十分ではありません。
もう少し具体的に聞いてみましょう。
たとえば、
「仕事で一番難しいことは何ですか」
「誰に質問すればよいか分かりますか」
「日本語で困ることはありますか」
「休憩時間は誰と過ごしていますか」
「寮や通勤で困っていることはありますか」
と聞くことで、本人が話しやすくなります。
4.面談は問題が起きる前に行う
面談は、問題が起きてから行うものではありません。
入社後1か月、2か月、3か月など、あらかじめ時期を決めて実施することをおすすめします。
定期的に面談があると分かっていれば、本人も相談しやすくなります。
また、会社側も、小さな問題の段階で気づくことができます。
面談では、次のような内容を確認するとよいでしょう。
- 仕事の理解度
- 難しい作業
- 人間関係
- 上司や先輩とのコミュニケーション
- 日本語で困っていること
- 生活上の困りごと
- 給与や勤務時間に関する疑問
- 今後覚えたい仕事
面談時間は、長時間でなくても構いません。
10分〜20分程度でも、定期的に話す機会があることが重要です。
5.面談では「話を聞く」ことを優先する
本人から不満が出たとき、すぐに会社側の説明を始めてしまうことがあります。
たとえば、
「残業が少なくて給料が思ったより少ないです」と言われたときに、
「でも雇用契約書には書いてあります」
と返してしまうケースです。
契約内容を説明することは必要ですが、最初から否定すると、本人はそれ以上話さなくなります。
まずは、
「そう感じているのですね」
「どのくらいの収入を想定していましたか」
と話を聞きます。
本人が何に不満を感じているのかを理解したうえで、会社の制度や契約内容を説明する方が、納得してもらいやすくなります。
面談は、会社が説明する場ではなく、本人の状況を知る場でもあります。
6.「人間関係」の問題は早めに確認する
早期離職の原因として、人間関係は大きな要素です。
たとえば、
- 上司の言い方が怖い
- 同僚から無視される
- 日本語の間違いを笑われる
- 外国人だけ仕事を多く任される
- 特定の社員との関係が悪い
といった悩みを抱えることがあります。
本人から直接言い出しにくい問題でもあります。
そのため、
「職場で話しやすい人はいますか」
「困ったときに相談できる人はいますか」
「嫌なことを言われることはありませんか」
と確認することも大切です。
もし問題があった場合は、本人だけでなく、関係する社員からも話を聞きます。
一方の話だけで判断せず、事実関係を確認したうえで対応しましょう。
7.生活上の悩みが仕事に影響することもある
外国人社員の場合、仕事以外の問題が離職につながることも少なくありません。
たとえば、
- 寮での人間関係
- 騒音
- 食事
- 金銭問題
- 本国への送金
- 家族の病気
- 恋人や家族との問題
- 通勤
- 病院の受診
- 行政手続
などです。
会社がすべて解決する必要はありません。
ただし、生活上の悩みが仕事に影響している場合は、必要に応じて相談先を案内することができます。
本人が一人で問題を抱え込まないようにすることが重要です。
8.転職の話が出たときは感情的にならない
外国人社員から、
「ほかの会社で働きたいです」
と言われると、採用や教育に時間をかけた企業側としてはショックを受けるかもしれません。
しかし、そこで、
「せっかく教えたのに」
「無責任だ」
「辞めるならもう来なくていい」
と感情的に対応すると、関係が悪化します。
まずは、
「なぜ転職したいと思ったのですか」
と理由を確認しましょう。
理由には、
- 給与
- 残業
- 仕事内容
- 人間関係
- 勤務地
- 家族の都合
- 将来のキャリア
などがあります。
場合によっては、会社側が改善できる問題もあります。
一方で、本人の希望を尊重すべき場合もあります。
大切なのは、退職を防ぐことだけを目的にするのではなく、なぜそう考えるようになったのかを知ることです。
その情報は、今後の外国人雇用の改善にも役立ちます。
9.トラブルは記録に残す
面談やトラブル対応を行った場合は、簡単でもよいので記録を残しましょう。
記録する内容としては、
- 面談日
- 面談者
- 本人からの相談内容
- 会社側の説明
- 今後の対応
- 次回確認する日
などがあります。
「言った」「言わない」のトラブルを防ぐためにも、記録は重要です。
また、複数の担当者が外国人社員を支援する場合、情報共有にも役立ちます。
ただし、本人のプライバシーに関わる内容は、必要以上に広く共有しないよう注意が必要です。
10.会社側の仕組みも見直す
早期離職が起きた場合、
「本人に問題があった」
だけで終わらせてしまうと、同じことが繰り返される可能性があります。
会社側にも改善できる点がなかったか確認してみましょう。
たとえば、
- 求人時の説明と実際の仕事に差がなかったか
- 給与や残業の説明は十分だったか
- 教育担当者は決まっていたか
- 質問しやすい職場だったか
- 日本語での説明が難しすぎなかったか
- 面談の機会があったか
- 外国人社員が孤立していなかったか
といった点です。
離職理由を記録し、次回の採用や受入れに生かすことで、少しずつ定着しやすい会社に変えていくことができます。
「辞めたい」と言われる前に話せる関係をつくる
外国人社員の早期離職を完全に防ぐことはできません。
本人の人生や家族事情、キャリアの希望など、会社では解決できない理由もあります。
しかし、日頃から声をかけ、定期的に面談し、困ったときに相談できる関係をつくることで、突然の退職を減らすことはできます。
重要なのは、「何か問題があったら言ってください」と言うだけではありません。
会社側から、
「最近どうですか」
「困っていることはありませんか」
「仕事で分からないことはありませんか」
と声をかけることです。
外国人社員が安心して話せる職場であれば、小さな不満や悩みの段階で対応できます。
早期離職を防ぐために必要なのは、特別な制度よりも、日常の小さなコミュニケーションの積み重ねなのかもしれません。
次回はいよいよ最終回です。
「入社90日後が本当のスタート」をテーマに、3か月面談、今後の目標、キャリア形成、日本語学習、評価など、外国人社員に長く働いてもらうための定着支援について解説します。

