外国人社員を現場の戦力に育てる【第4回】
「分かりました」を信用しすぎない
―実演と復唱で確認する理解度チェック―
外国人社員に作業を説明した後、「分かりましたか」と聞くと、「はい、分かりました」と返事が返ってきます。
ところが、実際に作業を始めると、手順を間違えたり、指示とは違う作業をしたりすることがあります。
このとき、「分かったと言ったのに、なぜできないのか」と本人を責めてはいけません。
「分かりました」という返事と、作業を正しく理解していることは、必ずしも同じではないからです。
今回は、返事だけに頼らず、実演や復唱によって理解度を確認する方法を解説します。
なぜ「分かりました」と答えるのか
外国人社員が、十分に理解できていないのに「分かりました」と答えるのには、さまざまな理由があります。
- 説明を聞いているという意味で「はい」と答えた
- 何度も質問すると迷惑をかけると思った
- 指導者に怒られたくなかった
- 分からない部分を日本語で説明できなかった
- 周囲の人が待っているため質問できなかった
- その場では理解したつもりだった
「はい」は、必ずしも同意や理解を意味するとは限りません。返事があっただけで、理解できたと判断しないようにしましょう。
「分かりましたか」と聞かない
理解度を確認するときに避けたいのが、次のような質問です。
分かりましたか。
大丈夫ですか。
できますか。
このような質問には、「はい」か「いいえ」だけで答えられます。本人が内容を説明しなくても返事ができるため、本当の理解度は分かりません。
代わりに、具体的な質問をします。
最初に何をしますか。
次に使う工具はどれですか。
部品を何個入れますか。
異常が出たら、どうしますか。
作業が終わったら、誰に報告しますか。
本人の答えを聞けば、どの部分まで理解できているかを確認できます。
本人の言葉で説明してもらう
指示を出した後は、本人に内容を言い直してもらう方法が有効です。
今の説明を、もう一度あなたから説明してください。
ただし、難しい日本語をそのまま復唱させることが目的ではありません。
本人が知っている日本語、身ぶり、写真などを使って説明できれば構いません。重要なのは、作業の順番と注意点を理解しているかどうかです。
説明できなかった場合も、「さっき説明したでしょう」と責めず、分からなかった部分をもう一度説明しましょう。
実際に作業してもらう
作業の理解度を確認する最も確実な方法は、本人に実演してもらうことです。
指導者が見守るなかで、最初から最後まで作業してもらいます。その際は、次の点を確認します。
□ 作業前の確認ができているか
□ 手順の順番が正しいか
□ 工具を正しく使っているか
□ 安全ルールを守っているか
□ 品質の確認ができているか
□ 異常時の行動を理解しているか
□ 作業後の報告ができているか
間違いがあった場合は、安全を確保したうえで、その場で具体的に修正します。
「違う」だけで終わらせず、「どこが違うのか」「正しくはどうするのか」を示すことが大切です。
教えた直後だけで判断しない
説明を受けた直後にはできても、翌日になると手順を忘れていることがあります。
一度できたからといって、完全に習得したとは限りません。
理解度は、次のようなタイミングで確認しましょう。
- 説明を受けた直後
- その日の作業終了前
- 翌日
- 1週間後
- 作業条件や製品が変わったとき
- しばらく担当していなかった作業を再開するとき
繰り返し確認することで、本人が苦手としている部分や、説明が不足している部分が見えてきます。
独り立ちの基準を決める
ある指導者は合格と判断し、別の指導者は不合格と判断する状態では、外国人社員も混乱します。
作業ごとに、独り立ちの基準を決めておきましょう。
□ 手順書を見ながら正しく作業できる
□ 手順書を見なくても正しく作業できる
□ 良品と不良品を区別できる
□ 異常時に設備や作業を止められる
□ 必要な相手へ報告できる
□ 決められた時間内に作業できる
□ 連続して一定回数、正しく作業できる
「何となくできそう」ではなく、確認項目に基づいて判断することで、指導者による評価のばらつきを減らせます。
最初から速度だけを求めず、安全、品質、速度の順に確認することも重要です。
間違いを報告できる雰囲気をつくる
理解度確認の目的は、外国人社員を試すことではありません。
間違いを早く見つけ、事故や不良品の発生を防ぐことが目的です。
間違えたときに強く叱られる職場では、本人がミスを隠したり、分からなくても質問しなくなったりする可能性があります。
正直に「分かりません」と言ったときや、異常を早く報告したときは、その行動を評価しましょう。
報告してくれて、ありがとうございます。
作業を止めた判断は正しいです。
一緒に確認しましょう。
このような対応を積み重ねることで、質問や報告がしやすい職場になります。
理解度確認のチェックリスト
□ 「分かりましたか」だけで確認していない
□ 本人に作業手順を説明してもらった
□ 本人に実際の作業をしてもらった
□ 安全・品質・手順を分けて確認した
□ 間違いを具体的に説明した
□ 数日後にも理解度を再確認した
□ 独り立ちの判定基準を決めた
□ 指導結果を記録した
□ 質問や異常報告をしやすい雰囲気をつくった
まとめ
「分かりました」という返事だけでは、本当に作業を理解できているか確認できません。
本人に作業の順番を説明してもらい、実際に作業してもらうことで、理解できている部分と、説明が不足している部分が見えてきます。
重要なのは、理解できていないことを本人の責任だけにしないことです。
伝え方、手順書、指導方法に改善できる点がないかを確認し、会社全体で教育の質を高めていきましょう。
次回は、日本語力と仕事の能力を分けて、公平に評価するための評価項目と運用方法を解説します。

