第5回 外国人雇用を、日本人社員も働きやすい職場づくりにつなげる
「外国人社員のために作った手順書が、日本人の新人にも役立っている」
「相談先を整理したら、班長が一人で抱え込むことが減った」
「教える時間を確保したことで、指導する側も落ち着いて対応できるようになった」
外国人社員の受入れをきっかけに始めた工夫は、職場全体の改善に広げることができます。
一方、取組を増やすだけでは、現場の負担が大きくなることもあります。大切なのは、実際に働く人の声を聞き、役立つ仕組みを無理なく続けられる形にすることです。
最終回となる今回は、これまで取り上げた日本人社員の本音を振り返りながら、外国人社員も日本人社員も働きやすい職場づくりを考えます。
外国人社員の戸惑いから、職場の課題が見える
長く同じ職場で働いていると、説明されなくても分かることが増えていきます。
道具の置き場所。
工程ごとの注意点。
異常が起きたときの連絡先。
忙しいときに誰へ応援を頼むか。
しかし、その「分かっていること」が、手順書や社内の案内に残っているとは限りません。
外国人社員から「どこにありますか」「誰に聞けばよいですか」と質問されたとき、初めて説明の不足に気づくことがあります。
同じ戸惑いを、日本人の新人や、別の部署から応援に来た社員も感じているかもしれません。
質問されたことを、その人だけに説明して終わらせず、「ほかの人も迷う場面ではないか」と考える。そこから、職場全体に役立つ改善が始まります。
「分かる人に聞く」から、確認できる仕組みへ
経験豊富な社員がいることは、現場の強みです。ただし、分からないことを毎回その人に聞く状態では、本人の仕事が中断され、不在のときには作業が止まってしまいます。
例えば、外国人社員への説明をきっかけに、部品の向きや確認箇所を写真に残す。異常時の連絡先を、作業場所から見える位置に示す。
こうした工夫により、社員が自分で確認できる場面を増やせます。
もちろん、安全に関わる判断や、初めて行う作業まで自己判断に任せるわけではありません。
自分で確認できることと、必ず人に確認することを明確にする。 その区別があれば、教える側も教わる側も安心して仕事を進めやすくなります。
教育を整えることは、教える人を守ることでもある
第2回では、指導担当者への負担の集中を取り上げました。
教育の改善というと、教わる人の習得を早めることに目が向きがちです。しかし、教える人が無理なく対応できるかも、同じように確認したい点です。
教材を整えても、作成や更新を一人に任せていないか。
指導担当者を増やしても、教える基準がばらばらになっていないか。
教育時間を設けても、通常業務がそのまま残っていないか。
取組の名前や数だけでなく、担当者の仕事が実際にどう変わったかを確かめましょう。
外国人社員への教育で整えた役割分担や時間の確保は、日本人の新人教育や、配置転換後の教育にも生かせます。
相談しやすさを、全員のものにする
第3回と第4回では、公平感と相談・支援の仕組みを考えました。
外国人社員の相談先を整理する際には、日本人社員についても、困ったときに誰へ連絡できるかを確認してみましょう。
「班長には話しにくいことを、別の人に相談できるか」
「相談してから、誰が返答するか分かるか」
「担当者が不在でも、対応が止まらないか」
これは、国籍にかかわらず必要な仕組みです。
一方、説明の方法や必要な支援は、人によって異なります。日本語に不慣れな人には分かりやすい案内を用意し、初めての相談では窓口につなぐ手助けをするなど、状況に応じた対応も必要です。
共通の相談先を整えながら、利用するために必要な支援を考える。その両方が、相談しやすい職場につながります。
改善のテーマは、現場の声から一つ選ぶ
職場全体の改善と聞くと、大きな計画や新しい仕組みが必要に思えるかもしれません。
まずは、外国人社員と、受入れを担う日本人社員の双方から、具体的な困りごとを聞いてみましょう。
外国人社員には、例えば次のように尋ねます。
- 仕事の説明で、分かりにくいところはありますか
- 困ったとき、誰に聞けばよいか分かりますか
- 一人で判断してよいか迷う場面はありますか
指導担当者や班長には、次のように聞いてみます。
- 繰り返し説明していることは何ですか
- 指導や相談対応で、後回しになっている仕事はありますか
- 一人では対応しにくいことは何ですか
意見を集めたら、安全への影響、繰り返し起きる頻度、負担の大きさなどを見て、優先する課題を選びます。
最初からすべてに取り組まず、まず一つ改善し、役立つかを確かめる方法が進めやすいでしょう。
小さく試して、双方に確かめる
例えば、部品の置き方について同じ質問が繰り返されているなら、写真付きの案内を一つの作業場所で試してみます。
その後、使う人と教える人の双方に確認します。
「写真を見て、向きが分かりましたか」
「迷ったとき、確認しやすいですか」
「説明の回数や時間に変化はありましたか」
「案内を直したほうがよいところはありますか」
質問が減っただけで、理解が進んだと判断しないことも大切です。本人が遠慮して聞かなくなっている可能性もあるため、実際の作業や理解の様子を併せて確認します。
使いにくい点があれば修正し、役立つことが確認できたら、ほかの工程や新人教育にも広げていきましょう。
作った仕組みを、続けられる形にする
手順書や相談窓口は、作った時点で完成ではありません。
作業方法が変わったのに、写真が古いままになっている。
担当者が異動したのに、連絡先が更新されていない。
相談記録を残すことが目的になり、返答が遅れている。
こうした状態を防ぐため、誰が更新するか、いつ見直すかを決めておきます。
また、現場の負担を減らすための取組が、記録や会議を増やしていないかも確認しましょう。既存の朝礼や打合せを使うなど、続けやすい方法を選ぶことが大切です。
経営者や管理者には、必要な時間や人員を調整し、現場から出た意見を改善につなげる役割があります。
日本人社員の本音を、改善の入口にする
この連載では、外国人雇用を支える日本人社員の立場から、受入れ前の不安、指導の負担、公平感、相談対応について考えてきました。
「教える時間が足りない」
「自分だけに相談が集まる」
「支援の理由が分からない」
こうした声は、受入れ体制のどこを見直せばよいかを知る手がかりになります。
同時に、外国人社員が感じている戸惑いや不安にも耳を傾ける必要があります。双方の声を聞くことで、一方からだけでは見えなかった課題が分かります。
外国人社員を迎えることをきっかけに、仕事の伝え方、教育の分担、相談の流れを整える。その積み重ねは、日本人社員にとっても働きやすい職場づくりにつながります。
まずは、受入れを担う社員と外国人社員に、それぞれ「今、一番困っていることは何ですか」と聞いてみてはいかがでしょうか。
その声を受け止め、一つの改善につなげることから始めてみましょう。
行政書士 Y’sインターナショナルでは、製造現場での経験を生かし、在留資格の手続きに加えて、外国人社員の受入れ・定着に向けた体制づくりについてご相談を承っています。現場の負担を整理し、外国人社員も日本人社員も働きやすい職場を目指したい企業様は、お気軽にお問い合わせください。

