外国人社員を現場の戦力に育てる【第3回】
外国人社員に伝わる「やさしい日本語」
―指示を短く、具体的に、分かりやすくする方法―
外国人社員に指示を出したところ、「はい」と返事をしたのに、実際には違う作業をしていた。このような経験はないでしょうか。
原因を「日本語力が低いから」と考えてしまいがちですが、日本人側の表現が分かりにくい場合もあります。
製造現場では、専門用語、省略表現、曖昧な指示が多く使われます。今回は、外国人社員に正確に伝えるための「やさしい日本語」の使い方を考えます。
やさしい日本語とは
やさしい日本語とは、難しい言葉を簡単な言葉に置き換え、外国人にも分かりやすくした日本語です。
ただし、子どもに話すような言葉や、不自然に単語だけを並べる話し方ではありません。
伝えたい内容を整理し、次のように話します。
- 文を短くする
- 一つの文で一つのことを伝える
- 曖昧な言葉を使わない
- 具体的な数字や場所を示す
- 必要に応じて写真や実物を見せる
仕事の正確さと安全を守るための伝達方法と考えましょう。
一度に多くの指示を出さない
次のような指示は、複数の内容が一つの文に入っています。
これが終わったら、あそこにある箱を持ってきて、部品を確認してから次の機械に入れてください。
外国人社員は、最初の指示を理解している間に、その後の内容を聞き逃す可能性があります。
次のように区切ると分かりやすくなります。
まず、この作業を終わらせてください。
終わったら、私を呼んでください。
次の作業を説明します。
最初は一つずつ指示し、仕事に慣れてから複数の作業をまとめて伝えるようにしましょう。
曖昧な表現を具体的にする
日本の職場では、相手が状況を判断することを前提とした表現がよく使われます。
しかし、次のような言葉は、人によって受け取り方が異なります。
- きちんと
- しっかり
- なるべく早く
- 適当に
- その辺
- 少し
- いつものように
例えば、「箱をきちんと並べてください」では、何が正しい状態なのか分かりません。
次のように具体化します。
箱のラベルを手前に向けてください。
箱を5個ずつ、2列に並べてください。
「なるべく早く提出してください」ではなく、「今日の午後3時までに提出してください」と期限を明確にします。
数字、時刻、場所、数量、向きを示すことで、認識の違いを減らせます。
二重否定や遠回しな表現を避ける
日本語では、丁寧に話そうとするほど表現が複雑になることがあります。
例えば、次の表現です。
保護メガネを着けないまま作業しないでください。
「着けない」と「作業しない」が重なるため、意味を取り違える可能性があります。
次のように伝えます。
作業の前に、保護メガネを着けてください。
「できればやらないでほしい」「今は触らない方がいいと思います」などの遠回しな表現も避けます。
禁止事項は、理由とともにはっきり伝えましょう。
このボタンを押さないでください。機械が動きます。危険です。
擬音語・擬態語に頼りすぎない
製造現場では、次のような表現が使われることがあります。
- ぐっと押す
- さっと拭く
- しっかり締める
- ぴったり合わせる
- ガタガタしている
- キュッと締める
日本人には感覚的に伝わりますが、外国人社員には程度が分かりません。
可能であれば、数値や基準に置き換えます。
ぐっと押す
→ 赤い線まで押し込む
しっかり締める
→ トルクレンチで20N・mまで締める
きれいに拭く
→ 油が見えなくなるまで、白い布で拭く
数値化できない場合は、見本や写真を使って正しい状態を示しましょう。
専門用語は統一する
同じ物を、人によって違う名前で呼んでいないでしょうか。
例えば、「治具」を別の人が「台」「セット台」「受け」と呼ぶと、外国人社員は別の物だと思うかもしれません。
社内で使用する名称を統一し、写真付きの用語集を作ると効果的です。
用語集には、次の内容を載せます。
- 物の写真
- 日本語での名称
- 読み方
- 用途
- 使用上の注意
専門用語をすべて簡単な言葉に変える必要はありません。仕事で必要な用語は、実物と結び付けて覚えてもらうことが大切です。
「分かりましたか」では確認できない
説明の最後に「分かりましたか」と聞くと、外国人社員は「はい」と答えることがあります。
しかし、「はい」が内容の理解を意味するとは限りません。話を聞いているという返事や、これ以上迷惑をかけたくないという気持ちから答えている場合もあります。
次のように確認しましょう。
- 最初に何をしますか
- 次に使う工具はどれですか
- 異常が出たらどうしますか
- この部品はどこに置きますか
- 実際にやってみてください
本人の言葉や実演で確認すれば、どこまで理解できているか分かります。
やさしい日本語のチェックリスト
外国人社員へ指示するときは、次の点を確認しましょう。
□ 一つの文を短くした
□ 一度に一つの指示を出した
□ 主語や対象を省略していない
□ 数量・時刻・場所を具体的に示した
□ 曖昧な表現を使っていない
□ 二重否定や遠回しな表現を避けた
□ 専門用語の呼び方を統一した
□ 写真、図、現物を併用した
□ 本人の説明や実演で理解を確認した
まとめ
外国人社員に指示が伝わらないときは、本人の日本語力だけでなく、日本人側の話し方も見直す必要があります。
短く話す、一つずつ伝える、数字で示す、曖昧な言葉を避ける。このような工夫だけでも、指示の行き違いを減らせます。
やさしい日本語は、外国人社員だけのためのものではありません。新人社員、若手社員、別部署から応援に来た社員にも伝わりやすく、現場全体のコミュニケーション改善につながります。
次回は、「分かりました」という返事だけに頼らず、実演や復唱によって作業の理解度を確認する方法を解説します。

